第11回1000字小説バトル
Entry18
ユキオは随分やつれた顔であたしのところにやってきた。 「俺さあ、もう死ぬかもしれない。何か、明日になったら死んでい るんじゃないかとか思うようになったら、段々生きていることに未 練が無くなってきちゃったよ。」 ユキオが突然そんな事を言うので、私は少し焦った。 「あんた、何言ってるのよ。死んだら何もかも終わりじゃない。そ んな馬鹿な考えしてないで、ね?」 「否、生きていることなんて結構意味無いのかもよ。」 「そんなこと言わないで。あたしユキオの為なら何でもするから。 ね、お願い。お金なの?それとも誰かに追われてるの?」 ユキオの顔が少し緩んだ。 「そんな物騒な事はない。俺は多少の恨みは買っているのかもしれ ないけど、殺されるほどのことはしてないよ。只、人生に光が見え ないって言うのかな、そんな感じで、死にたい気分なんだ。」 「誰だって、いつかは死ぬんだからさ、もうチョット頑張ってみな よ。あたしができることだったら、何でも言って。いつだって助け てあげるから」 「・・・ありがとう。なんか元気出てきた。」その割にユキオの顔 は青ざめていた。 その後私たちは一緒に寝て、次の日のお昼にユキオはバイトがあ ると言って帰っていった。 「お前さ、俺みたいな奴と結婚しちゃだめだぞ。」 私は頷いた。 それっきり、ユキオは私のところに現われなかった。 葬式でユキオの亡骸を見たときは顔をグチャグチャにして泣いた けど、一年たった今では、もうユキオの思い出も、面影も、あの温 もりも全て忘れてしまっていた。私は今自殺願望の男と付き合って いる。
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