第11回1000字小説バトル
Entry27
“怪奇!!双子美人姉妹の溺死体が海岸に打ち上げられる!” 「何だこのタイトルは!」 丸めた雑誌で頭を叩かれた新人の加藤が振り向くと、そこには三 期先輩の吉本が険しい表情で立っていた。 「昨日の事件の雑誌に載せる記事ですよ」 叩かれた頭を掻きながら加藤は言った。 「そんな事は分かってんだよ!俺が言ってるのは“双子美人姉妹” っていうのは何だ!って言ってるんだよ」 そう言うと吉本は、また加藤の頭を叩きつけた。 「何か問題ありますか?警察は双子だと言ってたし、生前の顔写真 は叶姉妹に似た美人でしたよ」 「かー!だからおまえは駄目なんだよ!双子は確かに警察発表で事 実だろうけど、美人かどうかはおまえの基準だろう。そんなものを タイトルにつけるな!しかも叶姉妹に似て美人とはどういうことだ !大体おまえは女の趣味が悪いんだよ!叶姉妹が美人だって言って るのは本人たちと三流マスコミだけだぞ!」 「それを言ったらうちなんか四流じゃないですか…」 「やかましゃ!」 また頭を叩かれた加藤だが今のは自業自得だ。 「俺達の雑誌が売れるには、まずはタイトルのインパクトが大事な んだよ。コンビニで何気なく見て、おっ!と思わせないと駄目なん だ。そして今回の様な意外性のある事件の時は、奇をてらったタイ トルをつけなくちゃいけない。いまどき美人姉妹が死んだなんて書 いても誰も見向きゃしないんだよ!」 入社して一年になる加藤だが、書いた記事が雑誌に掲載されたこと は一度もない。やる気はあるのだが、人の心をつかむ文章というの が、どういうことか理解できずにいるのだ。 「じゃあ吉本さんならどういうタイトルをつけるのか教えてくださ いよ」 「お!三期先輩の俺にそんな事聞くの。おまえも偉くなったね〜。 俺が新人の頃は先輩を神と崇めていたけどね。まぁおまえみたいな センスなしには手本が必要かもな」 吉本は高笑いをしながら、デスクの上に置いてあった紙切れにペン を滑らせた。 「ほらよ。俺ならこんなタイトルをつけるね。もうちっと勉強しな 〜」 それだけ言うと吉本は、雑誌をぶんぶん振り回しながら自分のデス クへと戻っていった。 「あの野郎。人を散々馬鹿にしやがって、いつか見返してやる」 加藤は吉本が書いた紙切れにそっと手を伸ばした。 “チョーウケル!叶シスターばりの双子シスターが海でデッドでカ ンジー!” 加藤は紙切れを握り締めながら呟いた。 「女子高生向けの雑誌なんて書くもんじゃねーな」
![]()
◆QBOOKSに掲載の記事・写真・作品・画像等の無断転載を禁止します。
◆投稿された各作品・画像等の著作権は、それぞれの作者に帰属します。出版権はQBOOKSのQ書房が優先するものとします。
◆リンク類は編集上予告なくはずす場合がありますのでご了承ください。