インディーズバトルマガジン QBOOKS

第11回1000字小説バトル
Entry40

羽田君の本当

作者 : 川島ケイ
Website : http://www4.plala.or.jp/riverland/
文字数 : 954
 幼馴染みの羽田くんは、魔王です。何かと評判の悪い魔族を統べ
る王。日本で言えば総理大臣のようなもので、とても、位が高いの
です。けれど普段の彼は、とても気さくでおっちょこちょいで、私
たちの間では、ちょっとした人気者なんです。
 そんな彼でもやっぱり悩みはあるようで、この間みんなで食事を
しているとき、彼は何も話さずに、ただ黙々とキウイを食べていま
した。心配になって彼に声をかけてみると、彼は震える声でこう言
いました。
「オレ、地球を滅ぼそうかと思ってる」
 彼が魔王だと分かってはいましたが、それでも驚きました。そし
て、どうしようかということになり、その場にいた5人に多数決を
とってみました。3対2で賛成多数でした。

 今日は地球最後の日です。昔あったいろいろなこと、そして、こ
れから起こるはずだったたくさんのことは、もうすぐ、消えて無く
なってしまいます。
 むかし羽田くんと一緒に埋めたタイムカプセルは、結局掘り起こ
されることのないままに、消えてしまいます。
 ドアの方で何かが落ちる音がしました。郵便受けを覗くと、一枚
の紙切れが入っていました。
『羽田は遂に地球を滅ぼした』
 紙切れをゴミ箱に放り投げ、私は大急ぎで自転車を駆りました。

 羽田くんの部屋の呼び鈴を押すと、ビール片手に羽田くんが現れ
ました。
「やあ。上がりなよ」
 そう言って彼は部屋の中へと戻りました。私はそのまま玄関に立
っていました。
「地球、滅ぼすんじゃないの?」
 羽田くんは空っぽになった缶を机に置いて、冷蔵庫から新しい缶
ビールを取り出しました。
「滅ぼしたよ」
「滅んでないじゃない」
 羽田くんは缶ビールの蓋を開け、ぐいっとあおりました。
「いや、だから、オレの気持ちの中で」
 私は何も言わず羽田くんを見つめました。羽田くんはすねた子供
みたいに唇を尖らせました。
 羽田くんは手を伸ばし、冷蔵庫の上にある地球儀を掴みました。
そして窓を開け、思いきり外に放り投げました。地球儀は空中で爆
発し、粉々に砕け散りました。
 破片がぱらぱらと白々しい音を立てました。
 羽田くんは私の表情を窺うように、ちらりと振り返りました。

 タイムカプセルの中に、羽田くんは「一生の誓いだ」と言って、
小さな紙切れを入れました。そこに書いてあった言葉を、今でも覚
えています。

 ウソはつかない。






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