インディーズバトルマガジン QBOOKS

第11回1000字小説バトル
Entry5

ヒミツ

作者 : Momo
Website : http://www.geocities.co.jp
文字数 : 1000
「誰だろう」
美野子は首を傾げた。
彼女の手に握られているのはシャープペンシル。
夕食の後、郵便受けに入っていた、と母から渡された白い封筒の中
身がそれだった。
なんの添え書きもなく、ただシャープペンシルが一本。
封筒には「みや」という二文字が書かれているだけで、差出人の名
前はない。
プレゼントというわけでもなさそうだ。
かなり年季も入っているし、コンビニで買える一般的な形のもので
ある。
実際、似たようなものを美野子も持っていたことがあった。
「変なの」
呟いてペンケースにそれをしまうと、美野子は布団に潜り込んだ。
冬休みというのはイベントが多い。
睡眠はとれる時にとっておいた方がいいのだ。

布団に入って小一時間。
美野子は何度目かの寝返りを打った。
どうしても眠りにつくための身体の位置が決まらないのだ。
もどかしさが不意に込み上げて、美野子は上半身を起こした。
そのまま枕元のランプをつける。
眠れないのを例の妙な届け物のせいにすることにして、彼女はペン
ケースを開いた。
机から封筒も取り出して眺める。

切手も住所もないのだから、差出人は自分で届けに来たのに違いな
い。
「みや」と彼女が呼ばれていたのは中学生の頃だ。
仲の良かった友達は誰も、美野子の通う進学校には受からなかった。
親の説得に負け、結局友達と違う道を選んだ彼女は今、新しい「み
ぃ」という名前で呼ばれていた。

あの頃の友達…?
美野子は3年前に思いを馳せた。
蘇る思い出はみな、子供じみていて、同時に眩しかった。
小さなヒミツを共有することで友情を確信していたあの頃…。

「…!」
心当たりがあった。
シャープペンシルが届けられた理由、それは…。

はやる心に震える手で部品ごとにバラバラにして、軸を覗き込む。
「やっぱり…」
そこには細く丸められた紙切れが入っていた。
あの頃、仲間はみんなこのタイプのシャープペンシルを使っていた。
それは、授業中に落とした振りをして、こういう風に手紙を交換す
るためだったのだ。

美野子は紙切れを取り出すと、丁寧にそれを広げた。

【みや、こんな風に手紙を書いてごめん。リエだよ。覚えてる?こ
れを読んでいるなら、ヒミツの手紙覚えてるんだね。あの頃からず
っと好きだったタカに告白して、振られちゃいました。そしたらな
んか、他の誰でもなく、みやに会いたくなったの。よかったら電話
して】

メッセージに携帯の番号が添えられていた。

美野子は、なぜ自分が泣いているのか分からなかった。






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