第11回1000字小説バトル
Entry8
静かな夜中の三時。最近夜中に目が覚める。会社に入社してもう 三年がたつ、未だに信じられない事は人生というものがこんなにく だらない事の繰り返しなのかという事だ。 『毎日嫌な事を我慢する。誰かが我慢したから、それに合わせて君 も我慢すべきだ。いいから君は目をつぶって言う事を聞けばいい。 右を向く事が正しいのではなく、右を向けといった事に条件反射の ようにしたがった事が正しいのだ。そんな機械のような生活の中に 自分なりに理由を作り、会社の出した目標に対して達成感を見つけ なければならない。』 布団から抜け出し煙草に火をつける。大きく吸い込んで大きく吐 く。深呼吸のようにそれを繰り返し、興奮した脳を落ち着かせる。 落ち着こうと努力をするのだ。私は落ち着こうとつれば落ち着ける ものだと信じている。要は信じる事が大切なのだ。それでも毎日不 安で夜中に目が覚める事には心身ともにダメージが大きかった。 『就業中は利益を追求し常に会社のために行動し、そのケアをかね て就業後は社員同士のコミニケーションも大切だ。酔った振りをし 話す事で鬱憤を晴らし。次の日からまた何事もなかったかの用に振 る舞う。ストレスは体によくないからため込まない事。上手に発散 し、円滑に仕事を進められるようにするのが望ましい』 鞄から取り出した白い封筒には退職届けと書かれた黒い文字があ る。これが私のストレスの上手い発散の仕方なのだ。私はこれを持 ち歩く事でいつでもここから開放されるのだと簡易的に感情をコン トロールするようにしている。 暗いワンルームの部屋は静かで時が止まってるように見えるのに 時計の針だけが確実に時を刻んでしまう。それはちょっとした恐怖 で、確実に私はこの世界に参加していて、やはり同じように変化し ていくという証のようだった。その生々しさが恐くて私はボリュー ムを絞って音楽をかけて牛乳を冷蔵庫から取り出し一気に飲み干す。 そう言えば私は牛乳が嫌いだった。白い封筒をもう一度眺め、冴え た頭をそのままに布団に入る。布団を頭までかぶり息を殺す。 会社を辞めたければ辞めればいい。波一つたたない空気を恐いと 思えば音楽をかけて波を起こせばいい。消えない不安はどうすれば いいのかまだ解らないが、応急処置として消えないものはそのまま でいいと信じる事だ。 飲み干したコップのそこには白い私の嫌いだった牛乳が薄く幕を 張っていた。
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