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第12回1000字小説バトル
Entry18

必ず当たる予言

作者 : Momo
Website : http://www.geocities.co.jp/Bookend/2767
文字数 : 981
 あの日……。

 見上げると薄汚れたコンクリート壁と錆びた鉄の非常階段が空に
向かって伸びていた。
「ここかぁ」
 私は生き物の気配のない通路で必要以上に明るい声を出した。
「行こうよ」
 どこかぎこちない動きで桜子が私を促す。
「そうだね」
 私達は階段を上り始めた。

 この「的中率100%の予言者」の噂を聞きつけてきたのは桜子だ
った。
 占い師とどう違うのかは知らないけれど、面白そうなので行って
みることにしたのだった。

 階段を上り終えた先にある安っぽいアルミのドアを叩くと、白装
束の男が現れた。
「入りなさい」
 促されるままに私達は彼の後に続いた。
 部屋の中は畳敷きで祭壇やらロウソクやらを想像していた私は少
し意表を突かれた。
「あの……」
 予言を聞きに来た、と言おうとすると、彼は静かにするように、
と合図した。
 大人しく出された座布団に座って彼の一挙手一投足を見守る。

 男は私達と向き合って座ると、まずは桜子を、それから私を穴の
空くほどみつめた。
 決まり悪くなるほどじっと……。

 それから、やおら立ち上がると奥の文机に向かって毛筆を執り、
さらさらと何やら書き始めた。
「どうぞ」
 それぞれに1枚ずつ和紙に書かれた「予言」を渡してくれる。
「お代は?」
 桜子が尋ねると、男はにっこりとした。
「お志で結構です」
 予言の相場なんて見当もつかなかった私は財布の中に五百円玉を
みつけて、これでいいかな、と思った。
 ちらりと桜子を見ると、彼女は財布からお札を一枚抜き取ってい
るところだった。
 慌てて私も千円札を取り出して、彼に手渡した。

 寂れた路地に戻って紙を開くと、そこには「青い鳥が人生を変え
る」と書かれていた。
 そして桜子はいくら頼んでも彼女の予言がなんだったのか、教え
てはくれなかった。

 あれから10年。高校生だった私と桜子も大学を出てOLになり、
同じ頃に寿退社を果たした。

 就職した会社の社章は青くて、鳥のような形をしていた。
 今の夫に初めて誘われたデートは、彼の友達が出演した「青い鳥」
のミュージカルだった。
 とりあえず予言は当たったのだろう、と思っていた。

 今の今まで。

 生暖かい血が首筋を伝う。事故に遭ったのだ。久々の桜子とのド
ライブ。桜子のブルーバード。青い鳥。
 思わず笑うと、隣で彼女の声がした。
「まさかあの予言が当たるなんて」
 ああ、彼女の予言は何だったんだろう……。






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