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第12回1000字小説バトル
Entry21

千字本格推理小説「出口のない迷宮」

作者 : 逢澤透明
Website : http://www.geocities.co.jp/Berkeley/2435/
文字数 : 1000
 名探偵、空地小五郎。
 彼は今、古い洋館の地下二階を弟子の小囃子少年と共に歩いてい
た。
「コバヤシ君、今なにか聞こえなかったかい?」
 空地は少年に声をかけた。
「いいえ、聞こえませんでしたけど」
 その廊下で二人は耳をすませた。
「し、しまった!」
 突然、空地は叫び、廊下の突き当たりの部屋へ向かって駆け出し
た。
「ま、まってくださいよ、空地先生!」
 小囃子少年も後を追う。
 空地は突き当たりのドアを開いて部屋へ入る。力一杯引っ張った
のでドアは勢いよく壁にぶつかって跳ね返り、やはり勢いよく走っ
てきた小囃子少年の鼻と衝突した。
「アイタ!」
 小囃子少年は尻餅をついた。ちょっと間抜けなのだ。少年はヨロ
ヨロと立ち上がり、ぶつかったために閉まったドアを開けた。
「あ!」
 部屋の中では、空地が血まみれの男を抱きかかえていた。男の首
はざっくりと割れ、血が噴き出している。
「コバヤシ君、救急車をたのむ」
「はい!」
 小囃子少年は急いで回れ右をし、部屋から出ていった。しかしす
ぐに戻ってきた。顔には困惑と驚きが入り乱れている。
「先生、この部屋に出入口はあるのでしょうか?」
「いや、ないな。見ての通り壁も天井も床もコンクリートでできて
いる。窓もない。君の立っているドア以外に出入りする場所はない。
どうしてそんなことを訊くんだ」
「だって廊下の先も行き止まりなんですよ!」
「なんだと?」
「ドアも階段もないんです! 我々には出口がないんです」
 小囃子少年は泣きそうになるのを必死に堪えていた。

「ハメられたな」
「え?」
「犯人の罠に引っかかったようだ。ここは完全な密室だ。密室に我
々は閉じこめられられたのだ」
「そんな、なぜそんなことを。犯人はいったい誰なのでしょう?」
「作者だよ。作者が男を殺したのだ。推理小説を書くために、我々
を閉じこめ、男を殺したのだ。この小説のタイトルをよく見てみろ」
「まさかそんな……でも、おかしいじゃないでしょうか」
「どこがおかしいのだね?」
「タイトルからすると作者は本格推理をやろうとしています。その
作者が『作者が犯人だ』などという解決法を採るでしょうか? 本
格推理なら、ちゃんと登場人物のだれかを犯人にするのではないで
しょうか……あ! まさか犯人は」
 と小囃子少年は空地の顔を見た。
「今頃、わかったのかい? コバヤシ君。だが、この事件は迷宮入
りなのだよ」
「え? どうして?」
「字数がここで千字になるからだよ」






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