第12回1000字小説バトル
Entry25
昔々ある所にお爺さんとお婆さんがすんでおりました。お爺さん とお婆さんは、頭巾をいつも被っていました。その頭巾は、被ると 他の動物の言葉が分かる不思議な頭巾です。 ある日お爺さんはいつものように山で芝刈りをしていると、竹薮 の中から赤ちゃんの泣き声が聞こえてきました。行ってみるとお爺 さんの手のひらに載ってしまうような小さな女の子の赤ちゃんが、 竹の根元で泣いていました。かわいそうに思ったお爺さんは家に連 れて帰ることにしました。 またある日お婆さんはいつものように川で洗濯をしていると、桃 箱に乗せられた男の赤ちゃんが流れてきました。お婆さんの手のひ らに載ってしまうような小さな赤ちゃんです。かわいそうに思った おばあさんは家に連れて帰ることにしました。 子供達は大事に大事に育てられ二人とも元気にすくすく育ちまし たが、十年経ってもお爺さんのひざぐらいの大きさにしかなりませ んでした。 ある日子供達がお外の遊びから帰ってくると、お爺さんとお婆さ んに言いました。 「今日ね、僕たちと同じくらいの子とおともだちになったよ。その 子ね、舟で川から流れてきたんだって」 「どんなお舟? 」お婆さんがききました。 「うーんとね、お爺さんの御椀くらいの舟。それとね御侍さんみた いに刀も持ってるんだよ」 「どんな刀? 」 「お婆さんが御裁縫する時の針くらいの大きさかな。悪いことばか りする恐い鬼を退治に来たんだって」 「あらあら」お婆さんは少し困ったような顔をしました。すると今 度はお爺さんがききました。 「その鬼というのはどんな悪いことをしたのじゃ」 「うーん、わかんない」 「じゃあ、どうして退治されなきゃならないのじゃ」 「わかんない」 「いいかい、人は見た目で判断しちゃいけない。恐い顔をした人で も優しい心の持ち主は居るのじゃからな。それに悪いこともしてい ないのに悪い人と決めつけちゃかわいそうじゃよ。いいね、わかっ たね」 「はーい」子供達は元気に返事をして自分の部屋に行きました。 「かわいいもんじゃのう。婆さんや」 「本当にねえ」 「何が鬼だって、あんなかわいい子供達を捨てる奴の方がよっぽど 鬼だろうに」 「それより、頭巾をちゃんとしておいてくださいな。あの子達のお ともだちが来るかもしれませんよ」 「そうだな。頭巾が無ければ、もうあの子達と話ができなくなるか もしれないからな」 そう言いながらお爺さんは、頭巾を注意深く被り直しました。
![]()
◆QBOOKSに掲載の記事・写真・作品・画像等の無断転載を禁止します。
◆投稿された各作品・画像等の著作権は、それぞれの作者に帰属します。出版権はQBOOKSのQ書房が優先するものとします。
◆リンク類は編集上予告なくはずす場合がありますのでご了承ください。