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第12回1000字小説バトル
Entry25

作者 : 吾心
Website : http://www.phoenix-c.or.jp/~seki/index/top.htm
文字数 : 997
 昔々ある所にお爺さんとお婆さんがすんでおりました。お爺さん
とお婆さんは、頭巾をいつも被っていました。その頭巾は、被ると
他の動物の言葉が分かる不思議な頭巾です。
 ある日お爺さんはいつものように山で芝刈りをしていると、竹薮
の中から赤ちゃんの泣き声が聞こえてきました。行ってみるとお爺
さんの手のひらに載ってしまうような小さな女の子の赤ちゃんが、
竹の根元で泣いていました。かわいそうに思ったお爺さんは家に連
れて帰ることにしました。
 またある日お婆さんはいつものように川で洗濯をしていると、桃
箱に乗せられた男の赤ちゃんが流れてきました。お婆さんの手のひ
らに載ってしまうような小さな赤ちゃんです。かわいそうに思った
おばあさんは家に連れて帰ることにしました。
 子供達は大事に大事に育てられ二人とも元気にすくすく育ちまし
たが、十年経ってもお爺さんのひざぐらいの大きさにしかなりませ
んでした。
 ある日子供達がお外の遊びから帰ってくると、お爺さんとお婆さ
んに言いました。
「今日ね、僕たちと同じくらいの子とおともだちになったよ。その
子ね、舟で川から流れてきたんだって」
「どんなお舟? 」お婆さんがききました。
「うーんとね、お爺さんの御椀くらいの舟。それとね御侍さんみた
いに刀も持ってるんだよ」
「どんな刀? 」
「お婆さんが御裁縫する時の針くらいの大きさかな。悪いことばか
りする恐い鬼を退治に来たんだって」
「あらあら」お婆さんは少し困ったような顔をしました。すると今
度はお爺さんがききました。
「その鬼というのはどんな悪いことをしたのじゃ」
「うーん、わかんない」
「じゃあ、どうして退治されなきゃならないのじゃ」
「わかんない」
「いいかい、人は見た目で判断しちゃいけない。恐い顔をした人で
も優しい心の持ち主は居るのじゃからな。それに悪いこともしてい
ないのに悪い人と決めつけちゃかわいそうじゃよ。いいね、わかっ
たね」
「はーい」子供達は元気に返事をして自分の部屋に行きました。
「かわいいもんじゃのう。婆さんや」
「本当にねえ」
「何が鬼だって、あんなかわいい子供達を捨てる奴の方がよっぽど
鬼だろうに」
「それより、頭巾をちゃんとしておいてくださいな。あの子達のお
ともだちが来るかもしれませんよ」
「そうだな。頭巾が無ければ、もうあの子達と話ができなくなるか
もしれないからな」
そう言いながらお爺さんは、頭巾を注意深く被り直しました。






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