インディーズバトルマガジン QBOOKS

第13回1000字小説バトル
Entry14

ボイジャー

作者 : 佐藤ゆーき
Website : http://www.d2.dion.ne.jp/~syuki
文字数 : 971
  アルファ・ケンタウリ系第四惑星。そこは地球と呼ばれている。
そこには約四万年前に太陽系第三惑星から移住して来た人々が住ん
でいるが、今では恒星間飛行の技術も失われ、自分達の住む星の名
前がなぜ地球というのかさえも忘れ去られていた。
 その惑星の太陽が二つ昇る灼熱の砂漠。一台の馬車が走っている。
乗っているのはカーラという十七歳の少女。黒い肌の国の娘。カー
ラは前の晩、寝室の窓から大きな流星を見た。それは長い光の尾を
引き、地平線を明るく照らした。それはきっと隕石か何かで、たま
たまこの星の重力に捕らえられ、空気の層との摩擦で燃えあがった
ものだろう。そんなことは五歳の子供でも知っている。それだけで
なく何年かに一遍やってくるほうき星は真っ黒に汚れた雪玉で出来
ているということや、銀河の中心には光さえも吸い込む黒い点があ
るということさえも
 だからこれまでそんな流星ごときで大騒ぎすることなんかなかっ
たのに、その晩の流星だけはなぜかカーラの心を引き付けた。それ
はまるでおとぎ話の太陽が一つしか昇らない惑星の物語のように懐
かしい気持ちにさせた。そして次の日の朝早く、カーラは馬車を走
らせた。
 あの流星が落ちたと思われる場所まで近付いた時、もう太陽は一
つ沈んでしまっていて大分暑さは和らいでいた。もう少しで黄色い
肌の国との国境に差し掛かってしまう。そんな不安が心をよぎった
時、目の前に大きな穴が現れた。思った通りだクレーターだ。
 馬車を降りて、その穴に近付く。まん中に黒焦げになった金属の
塊が転がっている。白い肌の国で時々見つかる鉄の遺跡と何か関係
あるのだろうか。そんなことが頭をよぎる。
 その金属の塊は原形をとどめておらず、どこもかしこも真っ黒に
なっていたがその中でカーラは直径三十センチ程の円盤を見つけた。
被っている煤を手で払うと金メッキを施された表面が現れた。    
 それを目にした時、カーラはどうしてか分からないがとても悲し
い気持ちになり、涙が流れた。
 カーラには分からなかったが、カーラのDNAは知っていた。そ
れは自分の先祖が太陽系第三惑星に住んでいた頃、宇宙の他の生命
に向けて送られたメッセージだということを。そして今DNAは知
ってしまった。四万年という時がたってもやっぱり自分達は孤独だ
ということを。






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