第13回1000字小説バトル
Entry16
何処まで行ったか記憶にないが、人生はゲームだと悟った。 物事を深刻に捕らえる程に・・・・。 その代償について考えることもなく、人生は目の前を過ぎていった。 成し遂げたことは皆無に等しく、全ての希望は拒絶された。 男は砂浜にいた。 男はどこを見るともなく海を眺めていた。 生命の源とはまるで思えない青黒い海を・・・・。 この男は自分は救世主だと偽り多くの人々を餌としてきた。 一時は、本当に自分は救世主ではないか。そんな思い込みまでし たものだった。 しかし、西暦二千年が過ぎると信者は急激に減りはじめた。 間違っているのは俺だって?(そうよ) 俺はいつも最大限の努力をしてきた。(嘘つき!) それじゃあどうすればいいんだ。(サヨナラ) とうとう最後の信者(兼愛人)も逃げるように男の元を去って行っ た。 男は深い喪失感の中で佇んでいた。 「どうして泣いているのですか?」 男は我に返って顔を上に向けた。そこにはふさふさとした白髪と、 口髭をした老人が傍らに立っていた。学者や教授と言っても過言で はない理知的な顔付きをしている。 男は目尻を指先で拭った。いつの間にか泣いていたらしい。 「目に砂が入っただけです」 老人はよっこらと男の横に腰を下ろした。 それから、 「あなた、顔色が悪いですよ」 老人は、なりふり構わずといった感じで訊いた。 「最近眠れなくて、眠っても悪い夢ばかりですぐ飛び起きてしまい ます」 男は素直に答えた。 「どんな夢ですか?」 「とにかく見たくないような夢です」 現実も夢も同じことだ。 男の脳裏にはなぜかそんな言葉が浮かんだが、声には出さなかっ た。 少しの沈黙の後、 「大丈夫ですよ。その悩みも今日でおさらばです」老人は口を開い た。 「それに、あなたはもう夢を見ることはありませんよ」 男が気付いたときには老人は拳銃の引き金を絞っていた。 “パァン” 乾いた、それでも小気味良い音が響いた。 男は低空のバックドロップを喰らったレスラーの如く頭から仰向 けに倒れた。 そして、砂漠の湧き水のように額から赤い血が流れ出した。 「最近は気分が悪くて。気紛れと言うべきかな」老人は誰に向かっ てともなく言った。 男の耳元に顔を近づけ、 「私も夢を見ますよ。最近は悪い夢ばかりですけど」 そう囁き、砂を踏みしめるようにゆっくりと歩きはじめた。
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