第13回1000字小説バトル
Entry25
アノ……先生……ご相談が……。……先生。私……多重人格かも しれないんです……。違います違います。思い込みなんかじゃあり ません。絶対です。絶対にです。……ソンナ……冗談なんかじゃあ りません。本当なんです……信じてください……。私には先生しか いないのです。お願いしますお願いします。ドウカ……ドウカ……。 証拠もあるんです。チャント……。ホラ、この写真です。しっかり 見てください。サァ……。 どうです……その写真に映っているのは間違いなく私……。タッ タの一ヵ月前の写真です……。でも……記憶が――イエイエ、私の 記憶はちゃんと憶えています。私の記憶はしっかりと。……その日 は家で過ごすことのできた最後の日だったので……トテモトテモ鮮 明に……。 あの日は九時に起きて一人で朝食を食べ、病院の時間になるまで 部屋で読書をしていました。……エエ、間違いありません。読みか けの小説を読み終えてから家を出たのです。 ……エッ、母ですか?母とは五分くらい世間話をして……それか ら買い物に――母のはず無いでしょう。私は父親似だとよく言われ るんです。写真に映っているのは私です。母じゃありません。ええ 自信があります。神に誓って。 ……妹?……妹は確か……友達と遊びに……映画を見に行くとか なんとかで、私が起きた時にはもういませんでした。 ……何度言えば……何度言えばわかるんですか。それは私です。 私なんです。十も年の離れた妹のはずがないじゃないですか。 ……ウ、嘘?……嘘ナンカ……ツイテ……マセン……。 アアア、違うんです違うんです。実は違うんです。本当は… …本当は……私は……私は……その日の記憶が全くないのです……。 いつ起きて、いつ病院に行って、どうして入院しているのかさえ… …。嘘をついたのは、少しでも……少しでも……少しでも私の本当 の病気のことを知ってほしかったんです……。許してください許し てください……。でも……本当なんです。信じてください信じてく ださい。 ○×△▲……?ソンナ……酷い……。酷すぎます……。……先生 ……先生……私は……私は……。……アア、先生、どこに行かれる のですか。もう少し……もう少し……お話を……お話を……。信じ てください。私は多重人格なんです。多重人格なんです。明日…… 明日はもっと立派な証拠をお持ちします……。キット……キット… …ドウカ……ドウカ……シンジテ……クダサイ……ネ。
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