第13回1000字小説バトル
Entry31
目覚ましが鳴らなかった。揺すると秒針が息をしながら動き出し た。柱時計はもう9時。10時からは会議だ。隣の部屋からテレビ の音が漏れてきた。着替え始めると、女房の声だけがした。 「まだ行ってなかったの。早く行きなさい」 俺は台所から包丁をするりと取り出すと、女房の寝室に向かった。 文化包丁だが仕方が無い。「何よっ」という非難の声を無視し、 俺は女房に何度も包丁を突き刺した。 「行ってきます」 「ゴミ忘れないで」 女房の声に、俺はゴミ袋を抱え家を出た。 ゴミ置き場では、隣のおばあちゃんがニコニコと挨拶してきた。 「おはようございます。今日はゆっくりですね」 「あ、おはようございます」 「お忙しいから、大変でしょう」 「いやぁ、そんな事ないですよ」 俺も、笑顔を振り撒いた。 係長にもなれないと近所で吹聴しているばばあを、俺は殴った。 ばばあは「ぐふぁ」と言ってゴミ袋の山の中で、溺れていた。 駅前では、学校のはずの女子高生達が、座り込んで笑っていた。 近頃のガキ共は、勉強もしないで遊んでばかりいる。逆パンダの 顔も何とかならないのか。俺は小便をかけて、顔の化粧を落とし てやった。 遅い時間だが、電車は混んでいた。化粧の濃い女が大声で喋って いると思ったら、携帯だった。 うるさい奴だと見たら、目が合って睨まれた。長い電話が終わる と、俺に詰め寄ってきた。 「ばーっか。イヤらしい目で見てんじゃねぇよ」 女とは思えない口ぶりをしたブタは急に黙った。俺の右手の包丁 が目に入った様だ。俺は期待に応え、ブタの脂身の多そうな腹に 包丁を刺し込んでくいっと捻ってやった。ブタは痛い痛いと泣き 喚いた。「っせい」俺が一括すると、ブタは殊勝にも泣き声を押 し殺した。周りの乗客は突然俺達の周りから、潮が引くように離 れ、少し静かになり、空いた席に俺は座った。 10時ギリギリに会社に着いた俺は、課長にいい訳し会議室へ向 かったが、会議は始まらなかった。 会議で俺は、居眠りしている奴に包丁を突きたて、遅れてきた奴 に切りつけたら、殆どいなくなったが、会議は無事終了した。時 間を潰しただけか。 酒の飲めない俺は、会社帰りにパチンコ屋で少ない小遣いを減ら した。家に帰るとメモが留守を守っていた。 今日は久美ちゃん家に泊まりです。適当に食べてね。愛してるわ。 俺は慣れてきた夕飯を作る為、台所に立った。今日はエロビデオ でも借りるか。
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