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第14回1000字小説バトル
Entry14

砂が降る

作者 : 厚篠孝介
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文字数 : 976
 ある日、空から砂が降ってくるようになりました。雪の様に白い
砂がアスファルトの上にうっすらと積もり、車が通る度に巻き上げ
られて、砂は隅へとたまり、そしてまた空から砂が降ってきました。
 誰もが驚いて空を見上げています。みんな面白いことが起きるも
んだと笑っています。
 けれど10日も経つと笑い事では無くなってきました。砂は毎日
降りつづけ、地面を覆い尽くしてしまいました。畑も田んぼも砂に
埋まってしまい、作物が取れなくなりました。湖が砂に埋まって水
道が止まってしまいました。屋根に砂が積もって潰されてしまう家
もあります。ショベルカーが毎日動いて砂を取り除いていますが、
砂は後から後から降ってきます。世界中が砂漠になっていきます。
 電車が止まり、危険なので原子力発電所も止まりました。あれほ
ど明るかった街が暗闇に沈んでしまいました。月の明かりが全てを
呑みこんでゆく砂を青く照らしています。
 食料が無くなりました。水もない人々は乾き、餓えています。海
の魚もあっという間に捕り尽されてしまいました。
 だれもなぜ砂が降ってくるのか分かりませんでした。科学者達は
ただ困っています。
空に原爆を打ってみた国もありました。レーザーで空を打った国も
ありました。人工衛星で地球を調べた国も、みんなで祈った国あり
ました。
砂は車でもビルでも工場、平原、山、軍事基地、犬小屋、研究所、
学校、お墓、すべてを呑みんでいきました。餓死した人の死体も砂
の底へと埋まって、私達の街を砂の中へ押し込んで行きます。
砂は私達の文明をあざ笑っています。高速で移動し、地球を壊せる
爆弾を持ち、クローンを作れた私達の文明はただの砂に成す術があ
りません。
 砂は文明ばかりではなく、私達の思いや感情まで砂の中に閉じ込
めてしまいます。火山の爆発に一瞬で閉じ込められた町がローマ帝
国にはありましたけれど、私達も同じです。こうして砂漠になって
しまった街を歩いると、この下に当然だった昨日までの毎日がある
のかと思い、私は砂にのけ者にされたんじゃないかと、そんな気が
します。砂の下ではあの時と変わらない毎日が今日も繰り返されて
いるんじゃないか、そんな気になります。
 街はなくなり、砂だけになりました。砂は降っています。砂は空
も欲しがっているのでしょうか?
 変わらないのは月だけです。月を守ってやりたいと思いました。
 砂はまだ降っています……






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