インディーズバトルマガジン QBOOKS

第14回1000字小説バトル
Entry22

おかまのシゲルちゃん

作者 : 鳳めぐみ
Website : http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Kouen/3758/qmenu.html
文字数 : 998
 窓際の、前から二番目の席に座っているシゲルちゃんが好きだ。
 シゲルちゃんはおかまだと言われている。
 この中学の裏手の、赤い瓦屋根の家に住んでいるのだが、シゲル
ちゃんの家には三センチくらいのぶあつい板で出来た看板がかかっ
ている。
「八柳流家元 生け花指南 花材はこちらでご用意いたします」
 と、黒く太い墨書きの文字が書いてあるやつだ。
 シゲルちゃんは決して、今喜んでクラスの女子が回し読みしてい
るJUNEマンガに出てくるような美形ではない。
 足は短い。太っている。上着の丈が少し短くて、ぽっこりしたお
尻がよくわかる。前髪はいつも長くしていて、細すぎる目を隠そう
としている。
 歩くときに、妙にくねくねと腰を振って前に進む。その“くねく
ね”がおかまっぽいのだ。他には別におかまっぽいところはないけ
れど、みんな喜んで“おかま、おかま”とシゲルちゃんをからかう。
シゲルちゃんは真っ赤になるけれど、なんにも言わない。
 でも、ドンくさくはないのだ。なぜか短距離走をすると勝って帰
ってくる。今年の運動会でみんなびっくりした。誰もシゲルちゃん
がそんなに速く走れるとは思わなかったからだ。予選も本戦も決勝
戦も、前につんのめるようにしてパタパタと走ってゆき、陸上部の
男の子と互角で競り合って勝ってしまったのだ。
 走り終わったあとで、陸上部の顧問のひょろりと背の高い若林先
生に話しかけられていた。何を話していたのかわからないけれど、
シゲルちゃんはその後も少年ジャンプをごろごろして読んでばかり
いる美術部から動かなかった。
「みぃちゃん何してるの? ぼんやりして」
「えっ」
 私は慌てた。振り向くと学級委員の千絵ちゃんだった。
「ねね、クリスマス、どうする? 誰かにプレゼントあげる? 」
「んん〜? 」
 その後、千絵ちゃんは現在片思い中のバスケ部の先輩のことを思
いっきり話して帰っていった。
(プレゼント、かあ)
 シゲルちゃんにもあげたいけど……あんまり話したこともないし、
なんかびっくりされて、かえって避けられちゃったりしそうだ。
 その時、チャイムが鳴って、先生が入ってきた。起立、礼、と掛
け声にあわせて頭を上げ下げし、座った。
 ……今考えるのはやめとこう。
 でもきっと、あげたりしないんだろうな。
 遠くから、見ていたいから。
 私は、斜め後ろの席からシゲルちゃんを盗み見た。
 シゲルちゃんの背中は、あいかわらず丸かった。






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