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第14回1000字小説バトル
Entry23

暗証番号

作者 : 太郎丸
Website : http://www.toshima.ne.jp/^takuto_k/index.html
文字数 : 1000
 薄い小さな紙の文字は、判読し難かった。
『し』だと思うが『レ』にも『L』にも『V』にも見える。
 せっかく手に入れた暗証番号も、2桁の数字が書かれていると思
ったが、こんなモノが書かれているとは…。

 単純に数値化するなら、50音表に番号を割り当て、『し』なら
32。『「レ(れ)』なら94だろう。
 いろは順なら…、『れ』が17で、『し』は42…。
 LやVもローマ数字だと考えれば、50と5だし、順番に数える
と…、12と22。
 だが、奴の性格からみて、ローマ数字やいろはは多分使わない。
すると、32か94だな。
 俺は銀行に行こうとして気がついた。携帯…?

「ボクの預金は、2千万位かな」
 貴之が、酔った時に漏らした言葉で、一気に酔いの覚めた俺は、
大きくなった自分の心臓の音が聞かれるんじゃないかと思った。
 以前の飲み会での、銀行の暗証番号の話を思い出したのだ。

「俺は、誕生日」
「私も誕生日だけど、彼氏のね」
「僕のは、電話番号」
 みんな似たり寄ったりだった。貴之以外は…。
「ボクのは、ゼロゼロの後にねぇ。…秘密。でも、忘れない様にメ
モ付けてるの」

 奴のキャッシュカードを盗んじまえば、大金が手に入る。金持ち
の奴には、大して影響はない。
 自分で学費を稼いでいる俺には、大きな誘惑だ。
 奴のキャッシュカードとそのメモさえ手に入れば、卒業までは働
かなくても、遊んでいられる。

「今日は泊まれよ」
 俺は飲み会が終わりかけた時、奴をアパートに誘った。
 散々飲ませ、寝入った奴のポケットから財布を抜き取り、気づか
れない様に隠した。
 財布に入っていたら決行する。

 昼近くになって起き出した奴を送り出すと、俺は奴の財布を調べ
た。…キャッシュカードと小さな紙片があった。

 奴が盗難届を出す前に、銀行へ行かねば…。

 0032 エラー
 0094 エラー
 0033 …

 俺は銀行から駆け出した。

 携帯の『し』は3を2回だが、それでも無かった。俺は財布から
金を抜き取ると、公園のゴミ箱に捨てた。

「この前、キャッシュカード落として使われたんだけど、暗証番号
ね、解読されなかったんだぁ」
「解読?」
 俺は他人事の様に聞いた。
「そう。紙に『し』って書いておいたんだけど、実は裏から見るん
だよね」
「う、裏?」
「そう。裏から見ると『し』じゃなくて『つ』になるの。もう変え
ちゃったから教えるけど、「あかさた」で4番目、「たちつ」で3
番目、だから43なの」






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