インディーズバトルマガジン QBOOKS

第14回1000字小説バトル
Entry27

おもいでいっぱい。

作者 : 3104
Website : http://plaza.harmonix.ne.jp/~o-satosh/
文字数 : 976
 真っ白い建物で三階建て。夏の天気の良い日、遠くから見ると、
青い空と実にマッチしていた。入道雲があるともっといいかもしれ
ない。

 僕らの学校は高台にあった。景色をさえぎるものは何もない。遠
くまで見ることができるんだ。

 夏の夜、こっそり高台に上がると、遠くで行われている花火大会
を確認することができる。遠すぎて打ち上げられる花火の音は僕ら
の耳には届かない。

 一瞬で消えてしまう色鮮やかな花びら。

 僕らは花火を見つめながら言った。
「おっ、上がった。ヒューッ、ドッカーン。」

 もちろん花火には、僕らの声は聞こえていなかったと思う。でも、
こっちからは見えていたんだ。おそらくパッと消える瞬間に、僕ら
が見ていたことに気づいてくれたと思う。

 きっと。

 冬の夕方、西日に照らされている学校は実に格好良かった。東の
空にまん丸のお月様があるともっと良いかもしれない。

 こっそり屋上に上がると遠くの白い山々を見ることができる。小
さくだけれど。遠すぎて山の寒さは僕らの肌には届かない。

 真っ白な雪肌。

 先生は、白い雪山を見ながら言った。
「この学校はスゴイね。筑波山だけでなくあんな遠くの山まで見え
るんだね」
 その年にこの学校へ来たばかりの先生には珍しかったかもしれな
い。でも僕らは、一年生の頃から見慣れていた景色だったので、ち
っとも驚くことではなかった。

 春に高台の下から校舎を見上げると、斜面の芝の緑が、一層その
白さを引き立てた。

 写生会になるとみんな高台を降りて下のグランドから、緑の芝、
青い空、白い校舎をいろいろな角度から自由に描いた。

 夢中で真っ白い校舎を見続けたんだ。

 きっと真っ白い校舎は、細かいところをたくさん見られて恥ずか
しかったと思う。

 秋になると斜面の緑色の芝は次第に色あせてくる。そんな季節は、
赤トンボが斜面の主役になるんだ。

 土曜の午後、高台の下のグランドでよく野球をやった。斜面が赤
トンボであふれる中、僕らはボールを追っかけた。山口先生のノッ
クのボールは、真っ白い校舎と重なるほど高く飛ぶ。そして、赤ト
ンボは斜面を自由に飛び回る。

 真っ白い校舎で三階建て。

 僕らは六年間、その校舎で学んだ。卒業する時、斜面の一角にタ
イムカプセルを埋めたんだ。そこから見上げる真っ白い校舎は、も
のすごく大きかった。

 作文、写生会の絵、みんなで撮った写真。

 僕らが50歳になったとき、それを開けることになっている。






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