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第14回1000字小説バトル
Entry29

殺人シミュレーター

作者 : アースワーム
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文字数 : 978
「これが殺人シミュレーター」です、と男は言った。ヒロシの目の
前にあるのは、何本ものコードが接続されているゴーグルや手袋だ
った。いかにもよくありそうなバーチャルリアリティの機械と言っ
たところだ。

「では早速始めましょうか」ヒロシは男の指示に従ってゴーグルや
手袋をはめ、真っ暗な部屋の中に入った。ヒロシがつけた機器類は
少し重かったが、電源が入るとそんなことは全く気にならなくなっ
た。あまりにも現実そっくりの映像が映し出されていたからだ。

「場所の設定はどこにしましょうか? 学校、大都会、オフィスな
ど、いろいろありますが…」
「じゃあ学校がいい」

 すぐに学校の映像が映し出された。どの学校にもある平凡な教室
の中だ。どうやら授業中らしい。50代ぐらい禿げた教師が、国語
を教えている。ヒロシは1番後ろの席に座っていた。

 ヒロシはいきなり立ちあがり、隣に座っていた男子生徒を刺した。
ブスッ…。手にしたナイフが生徒の腹に突き刺さり、恐怖で歪んだ
表情をして床に倒れた。女子生徒の悲鳴が聞こえてきた。ヒロシは
興奮した。みんなが自分を恐れ、注目している。お前らの命はオレ
が握っているんだ…。

 止めに入った教師や男子生徒を次々と刺し、逃げようとする女子
生徒も容赦無く刺した。

 ハァハァ…

「どうでしたか。殺人シミュレーターは?」
「凄いシミュレーターだ…」
「そうでしょう。我が社が全力を上げて開発したものですから…」
「でも、何か物足りない。所詮バーチャルなものはやっぱりバーチ
ャルなんですよ…」
「でしたらもっと現実的な体験ができるゲームがありますが…」

 ヒロシは隣の部屋へ連れていかれた。何も無い部屋の中に、一人
の少年がいた。年齢は同じくらい。無表情な顔をしている。

「何のゲームだ?」ヒロシが男に尋ねようとした瞬間、突然ドアが
閉められ、カギがかけられた。と同時に、その無表情な少年は、ポ
ケットからナイフを取り出した。

「お、おい、どういうことだ? や、やめろよ。オレは何も持って
ないんだぞ。卑怯じゃないか」少年は何も言わずに近づいて来くる
と、まるでロボットのように何のためらいも無くナイフを突き出し
た。

「うぁ…」ヒロシは倒れた。激しい痛みと共に意識が遠のいていく。
「オレ…は…死にたく…ない…」薄れていく意識の中で、ヒロシが
見たものは、彼の血で染まったナイフを持った、ヒロシ自身だった。






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