第14回1000字小説バトル
Entry31
あるとき、世界各国の『1』による会議が開かれた。会議といっ ても、愚痴の言い合いに終始するという、いたってくだらないもの であった。 他を制してまず口を開いたのはアメリカの1であった。 「まったく失礼するぜ。俺の名前は、あんた、犬の鳴き声じゃない か。ただ吠えるだけで、むこうさん、芸になりやがる。 『2−1=?』『ワン!』 本当は違うのだ。あんた、分かってくれよ、犬の、あの下劣な鳴 き声などと一緒にされるこの気持ちを。あんなのと一緒にされるの は俺のプライドが許さないのだ。頼むから、もう勘弁してくれ」 「おまえさんはまだいいさ。俺なんかは、なんてったってギャグと 一緒だ。そのうえおまえさんほど名を知られているというわけでも ない。分かるかい、それがどういうことか。俺の運命は、今後ずっ とそのギャグとともにあるということさ。 『読み方は、アインです。いや、違う違う。イとンの間をのばした らギャグになっちゃうでしょう』 ちぇっ。2のやつは、なんだかかっこいいのによう。なんてった ってツヴァイだよ。『ヴァ』だ『ヴァ』」 これは、いつでも赤ら顔のドイツの1の言葉である。 つづいては、言葉にくせのある中国の1。 「私アタマにきてるアル。なにがってアナタたち分かってるアルで しょう。そんなにニヤニヤして、私怒るアルよ。それとも本当に知 らないアルか。なら言うアル。私1のくせに、「アル」ばっかり言っ てるアル。それが頭にきてるアルね。自分で自分を許せないアルよ。 ……まだ分からないアルか。私の名前「イー」、2の名前「アル」 いうアルよ。嗚呼、つくづく嫌になってくるアル」 「皆さん大変なんですね。それに比べると、僕の悩みなんて全然た いしたことはないのですが……。まあ順番ですので言わせていただ きます。私のは、字面ですね。「いち」ですよ。見栄えの悪いこと このうえない。ONEさんなんて、なんだかこじゃれてていいじゃ ないですか。EINEさんはなんだか気品が感じられるし、一さん には一本筋の通った力強さがあるし……と、この程度でした。すい ません、すいません、くだらないことなんです。お願いですから怒 らないでください」 トリをつとめた日本の煮え切らない態度が災いして、会議は自然、 シリキレトンボ。甚だ歯切れの悪い幕切れになったとかならないと か。第一、こんな集まりを会議というのかどうか……いや、そもそ も、こんな会議、あったのかどうかすら……
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