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第14回1000字小説バトル
Entry32

ちんぽくん

作者 : 一之江
Website : http://www05.u-page.so-net.ne.jp/qd5/s-kumiko/
文字数 : 1000
 また途中で寝られちゃった。
 あたしは彼の小芋みたいなお肉を見下ろす。のったりと呑気そう
にしちゃって。
 人の気も知らないで。頭来る。まったくもう! 噛んでやる!
「いてっ、いってえよお」
 吃驚して、あたしは慌てて口からそいつを出して彼の顔を見上げ
た。だけど寝息が聞こえるだけ。まさか。
「お嬢さんね、乱暴はよくないよ」
 喋ってるのはそいつだった。
「ほんっと嫌われるよ。できればこの前みたいのがいいんだけど。
ソフトクリーム舐めるみたいにぺろぺろって。あれ最高よかった。
ちょっと腕っていうかお口がにぶ……」
「うるさい」
 あたしはそいつの首根っこを掴んだ。
「あんたねえ、ちょっと、そんなお喋りする元気があるんだったら、
もっと他のことに気を遣えないの?」
 そいつはぽかんと小さな口をあけて、あたしを見上げる。ああも
う、馬鹿にして。
「あのねえ、たまあによ。たまにしか会えないのに、何なのよ、こ
のざまは」
「あは、すみません。まあその、ちょっと中だるみっていうか飽き
ちゃったっていうか」
「何ですって」
「あ、いえいえ、ちょっと疲れ気味で。その気はあるんだけど、う
ーん、気持ちに体が追いつかないっていうのかなあ」
「何よ」
 あたしはそいつの首根っこをぎゅっと握りしめた。ぐえっと小さ
な口が湿っぽい息を吐く。ちょっと気の毒になって、あたしは手の
力を緩める。
「ああもう、乱暴なんだからあ。減点減点」
 そいつは首を左右に軽く振りながら、小さく叫ぶ。
「何よ、減点って」
「何って、もうお役に立てないってことだよ、お嬢さんの。へへん
だ」
 何よこいつ! かまうものか。もう思いっきりぎゅっとぎゅっと。
「ああああ、そおいうう感じかなああ。いいねえ、その力の兼ね合
いい」
 え、このくらい? 思わずあたしは力を加減する。
「なあんちゃって。そおんな簡単にいけば苦労しないんだもんねえ」
「……」
 やっぱり噛むしかない。あたしはじっとそいつを睨みつけてから
大きく口をあけた。
「お嬢さんっ。待って」
「だめ」
「あ、お嬢さん。歯並びきれい」
「関係ない。そんなこと」
「よかったね、矯正して」
「え」
「してたじゃん、きょーせい。ね、大成功」
「してないよ、矯正なんか」
「え」
 あたしたちは暫く見つめあう。何だかあたしは泣けてくる。ああ
何よ、ぺろぺろって。ソフトクリームって。
 涙をぽろぽろ零しながら、あたしはそいつを口に含んだ。ごめん
ね、と口の中でそいつは言った。






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