第14回1000字小説バトル
Entry4
太一は真っ黒に日焼けした手足を投げ出して風通しの良い縁側に 寝転がっていた。太陽が傾く午後5時、虫の声が早い秋の訪れを知 らせる夏休み最後の日。 「この子は一日中ご飯もろくに食べないでこんなとことに寝転がっ て。宿題は終わったの?」 母は洗濯物取り込むと太一の隣でたたみ始めた。 「うーん」 太一は薄っすらと目を開けるとまだ昼間みたいな明るさに目がやら れてまた目を閉じた。 「今日せっかく健一君が遊びにきてくれたのに、どうして遊ばなか ったのよ。夏休みの間あんなに毎日遊んでいたのに。」 太一は黙ったままだった。 「残念がってたわよ、夏休み最後の日だったのに」 確かに健一は残念そうだった。健一とは今日も遊ぶ約束をしていた のだ。なのに太一は理由も無く断ってしまったのだ。健一は最初そ この縁側にしばらく座ってゲームボーイをやっていたがしばらくし て「明日学校でね」といって帰ってしまった。 この夏休みに太一は健一といろんな冒険をした。駅前に新しくで きたコンビニに行ったり、川に泳ぎに行ったり、僕はプールで50 メートルを泳ぎきることができるようになった。健一が犬を飼い始 めたのでまだ小犬のその犬を連れて草むらに探検に行って基地も作 った、穴を掘っていたらきしめんみたいな虫が出て来て二人で冷や 汗をかいたんだ。それら一つ一つの黄金の時間たちは言葉にすると 数行でしか表わせず、なんだか色褪せた物になった。 「宿題はきちんとやっておきなさいよ。来年から中学生なんだから しっかりしないとね」 母は洗濯物を持って部屋を出た。一瞬洗濯物から太陽の臭いがした。 太一は寝返りを打って一冊のノートに手を伸ばした。「夏休みの 日記」と書かれたそのノートはどこをめくっても白紙だったが文字 の変わりにコオロギがリンリンと鳴きながら出て来た。 「たいちー夕飯の用意手伝ってちょうだい」 母が台所で叫ぶ声が聞こえる。太一はコオロギを軽く握ると外に投 げた。 「そんなに急ぐなよ。いずれ夏はきちんと終わるんだから」 太一はゆっくりとおきあがって台所に向かった
![]()
◆QBOOKSに掲載の記事・写真・作品・画像等の無断転載を禁止します。
◆投稿された各作品・画像等の著作権は、それぞれの作者に帰属します。出版権はQBOOKSのQ書房が優先するものとします。
◆リンク類は編集上予告なくはずす場合がありますのでご了承ください。