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第15回1000字小説バトル
Entry11

足なし鳥

作者 : Momo
Website : http://www.geocities.co.jp/Bookend/2767
文字数 : 1000
 小高い丘の上から戦況をうかがった俺の頬をかすめていったもの
があった。
 矢だと思い、いつのまに後ろを取られたのか、と慌てて身構えた
ところにまたやってくる。
 今度はその正体が見えた。赤い鳥だ。空気にふれて間もない血を
思わせる色だった。

 気の乗らないまま愛馬の鼻面を軽く叩いて出立を伝えると、彼は
嬉しそうにいなないた。
 甲冑を纏った身が重い。早く戦など終えて家に戻りたいと思った。
 粗末でも、自分の居場所と、安心できる空間があればそれでいい
と思った。
 他人の名誉のための戦いは終わりなどなく、いっそ負けてしまっ
た方が楽なのでは、と幾度も思う。
 要は兄弟喧嘩なのだ。前国王の第一子息が、母親が側室であった
ために王位を継承できず、正妻の息子で現国王である異母弟に対し
て宣戦布告したのだという。
 だが、雇われ者の俺には関係のないことだった。

 自分がどちらの側についているのかも、よくわからない。
 累々たる屍の山の間を歩き、少しでも身分の高そうな死体を見つ
けて身元を確認できるような品を毟り取るのが俺の生業だった。
 持ち帰り、人に見せ、それが敵のものであれば自分が討ち取った
ことにし、味方のものであればまことしやかに悲劇的な最期を語る。
 人の死を利用して稼ぐ俺は、「戦場の犬」と呼ばれる傭兵仲間の
間でも性質が悪い方だ。
 だが、他に生きていく道を知らなかった。

 はやる馬を抑えるようにして人のまばらな辺りに駆けて行く。
 俺の馬は、乗り手と違って勇敢だった。俺ではなく名だたる勇者
が騎手ならば吟遊詩人の歌に「黒き稲妻」などと謡われたに違いな
い。

 駆けているうち、遥か遠くにあの嫌な赤い鳥を見た。
 目が灼かれたように痛む。何か禍々しいものを感じながらも、引
き寄せられるようにそちらへと向かっていくうち、敵陣のかなり深
いところまで入っている事に気付いた。
 もし馬首を返せば、即刻敵方だとばれて首が飛ぶだろう、と思い、
その日の雇い賃を諦めてこっち側につこう、と決める。

 命あっての物種、である。
 ためらいなどあろうはずもない。

 そう決めて、やはり赤い鳥を追うことにした。
 全部で3羽。ようやく視界に入った鳥達は奇怪な形をしていた。
 足があるべき所に長い羽があり、最小限のはばたきで空を滑るよ
うに移動する。

 足なし鳥だ。祖父の寝物語が脳裏に蘇る。
 死者の導き手と言われる鳥である。

 不吉なものを見た、と思い、俺はようやく悟った。
 足なし鳥に導かれていたのは、この俺ではないか……。






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