第15回1000字小説バトル
Entry17
20×0年。突然変異の風邪が猛威をふるった。新ワクチンは効 果を上げたが、呼吸困難に陥り死亡するという副作用があった。だ が遺伝情報まで変えてしまうそれは、O型の血液を持つ人間に特定 されていた。 調査の結果、善悪の区別がつかない状態か、悪い事は大嫌いとい う潔癖気味の人達のみが生き残っていた。 A型も、B型の因子も持たない『ゼロ型』の彼らは、Z団と称し、 善行を施す団体を作った。その考え方と行動を、社会は歓迎した。 Z団は各地に設けた施設で、O型人間を中心に教育を開始した。 心と身体の統一を図る、良い人間になるための教育だった。その結 果O型人間はそろって、善人といえる人達になっていった。 10年後、Z団は善人委員会となり、メンバーの何人かは政治家 になった。クリーンな選挙と必ず実施される公約から、その10年 後には第一党となり、総理が輩出されるに至った。 彼らは国民のことを第一に考え行動するため、特定の人達には疎 まれたが、国民の大部分の人達からは、立法だけでなく、行政も司 法もO型人間に任せておけば大丈夫と思われる様になっていった。 「危ないですよ」 「…あっちへおいき。年寄りだと思ってバカにするんじゃないよ!」 「少し行った所に、信号がありますから、そちらから渡ったらどう ですか?」 「ほっといとくれ」 不審そうな目でみられた私は、ポケットから献血手帳を出し、お ばあさんに見せた。 「オ・O型かい。いやなぁにね、ひょっとしたら荷物を盗られるん じゃないかと思ったもんだから、ごめんなさいよ」 私はにこやかに微笑むと、おばあさんの荷物を持ち、目的地の彼 女の娘の家まで送っていった。 私の手帳には、『O型・RHプラス』の文字と『俊』という名前 が浮かんでいる。 私は仕事場へと急いだ。遅刻は出来ない。O型人間の遅刻は悪い 事ではないと法律でも決まっているが、遅刻は悪いのだという、以 前からの認識から、死につながる事もあるのだ。 早く家を出る習慣がついているので、遅刻はしなかったが、朝の 自主清掃には遅れ、呼吸が苦しくなった私はその場に倒れた。 「軽い発作で良かったですね。総理達と同じ様に暗示をかけましょ う」 医師は、今までの認識にとらわれない様にと、暗示をかけた。 その夜、明日から施行される法律が報道された。 今後O型以外の子供は、一人しか持てないとの事だった。 私は台所から包丁を取り出すと、子供部屋に向かった。
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