第15回1000字小説バトル
Entry2
金字塔 【TANGO】 愛してるわ、女が言った。 野獣な肉体が貧欲に愛撫を欲す。 目が覚めると 匂いだけが残っていた。 【美貌】 お前、あきねぇ? ユーが、鏡に映る自分の顔を眺めるタキに言った。 タイトなシャツが痩せた身体を引き立てる。 皮下脂肪のない体。病的だ。 ユーさー、エクスタシーある?SPEEDでもいいよ。 ケミカル系はよせ、って言ってるだろ。 とろんとしたタキの目とユーが鏡の中で出会う。 僕さー、この美貌のままで死にたい。 青白く美しい顔が力なくほほえむ。 ユーが後ろからタキを抱きしめ耳たぶを軽く噛み、 ばーか、と囁いた。 ショーが始るぞ。 ユーが、タキの肩に手を回し、促す。 女に興味ない。 タキはDCをポケットから取り出すと、 つんとして二人を同じフレイムの中に入れ、撮った。 お前が見たいって言ったんだろ。 タキの頬を指先でつねって、 勝ってにしろ、タキを残し、扉を開けた。 トイレに蒼い煙草の煙が流れ込んだ。 【SHOWGIRL】 ユーはステージから二列目の席に腰かけた。 ブロンドの女がセクシーに身体をくねらせる。 上向きの形のいい乳房がリズミカルにゆれる。 股を開き、陰部を指で押し開く。 なにも感じない。 ユーはコロナを喉に流し込んだ。 二番目の女。赤毛。ヒョー柄のスカーフを巻いている。 ティピカル。 つまらなそうに、ユーが踊る女の横顔に目をやった。 どきっとした。似ている。 そういえば、顔だけでなく、首筋、乳房、足の長さまで そっくりだ。間違いない。 ナオミだ。 ユーは、間違いであることを祈りながら、 高鳴る鼓動を抑えていた。 恥部を突き出し、観客の目の前で上下運動を繰り返す。 目を伏せたかった。 視線の違いに気づきナオミが確認した。一瞬の、 ほんの少しの間狼狽した表情をみせた。 愕然とした。 ダンスが終わり、ユーは、トイレへと向かった。 知ってたんだろ!ユーが怒鳴った。 そこには涙にぬれたタキがいた。 力なく崩れ落ちるタキを抱きかかえた。 切ったのか? 袖の染みが広がっていく。 ばかやろう! タキを両腕抱えに扉を蹴り開け、出口へ駆ける。 階段の手すりにナオミは凭れ掛けている。 目が逢った。ユーは階段へと急いだ。 二人が吸い付けられる。ナオミが目を伏せた。 ユーはナオミとすれ違い階段を降りた。 救急車を呼んでくれ。ユーが叫ぶ。 同じ匂いがした。 愛してる、タキが薄れ行く意識の中で囁いた。 ああ。 ユーは駆けた。
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