インディーズバトルマガジン QBOOKS

第15回1000字小説バトル
Entry24

潰瘍

作者 : 竹原 秀
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文字数 : 600
  診察台へ横向きに寝かされ、プラスティック製のマウスピースを
噛んだおれは、まるで空気の抜けたダッチワイフだった。
 その拒む事の出来ぬ口の中へ、彼はおもむろに挿し入れた。細長
く、しかし黒いゴム製の管は、締めつけるおれの喉を引きずりなが
ら、ゆっくりと、確実に侵入を続けた。
 彼はとても優秀な技師だったため、溢れる涙と共に訴えるおれの
瞳を振り向きもせず、四角い小さなモニターに釘付けになっていた。
 最も深い部分で、何かが蠢いているのを、おれは感じた。
 その時、優秀な技師である彼が小さく言った。
「ありました」
 悲しみの種からなる果実を、彼は見つけたのだ。
 数回、角度を変えながら手許の装置を操った後に、ゆっくりと引
き抜いて行く。
 精神の最深部に眠る、自分でも気づかないフリをしている罪を暴
かれたような気分でぐったりとするおれの背中の栓からは、さらに
多くの空気が漏れ出ていた。
 涎を垂れ流したままの口からマウスピースを外され、おれは人間
に戻った。
 侵入してくる異物による猛烈な吐き気と戦い抜いた自分を賞賛し
ようとも思ったが、何の事はない。深夜、黒い天井を見つめながら
自身に対して感じるそれと比べれば、現実的な分、耐え易かっただ
けの話だ。
 小さな番号札を手に、おれは次の窓口へと並んだ。






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