第15回1000字小説バトル
Entry24
診察台へ横向きに寝かされ、プラスティック製のマウスピースを 噛んだおれは、まるで空気の抜けたダッチワイフだった。 その拒む事の出来ぬ口の中へ、彼はおもむろに挿し入れた。細長 く、しかし黒いゴム製の管は、締めつけるおれの喉を引きずりなが ら、ゆっくりと、確実に侵入を続けた。 彼はとても優秀な技師だったため、溢れる涙と共に訴えるおれの 瞳を振り向きもせず、四角い小さなモニターに釘付けになっていた。 最も深い部分で、何かが蠢いているのを、おれは感じた。 その時、優秀な技師である彼が小さく言った。 「ありました」 悲しみの種からなる果実を、彼は見つけたのだ。 数回、角度を変えながら手許の装置を操った後に、ゆっくりと引 き抜いて行く。 精神の最深部に眠る、自分でも気づかないフリをしている罪を暴 かれたような気分でぐったりとするおれの背中の栓からは、さらに 多くの空気が漏れ出ていた。 涎を垂れ流したままの口からマウスピースを外され、おれは人間 に戻った。 侵入してくる異物による猛烈な吐き気と戦い抜いた自分を賞賛し ようとも思ったが、何の事はない。深夜、黒い天井を見つめながら 自身に対して感じるそれと比べれば、現実的な分、耐え易かっただ けの話だ。 小さな番号札を手に、おれは次の窓口へと並んだ。
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