インディーズバトルマガジン QBOOKS

第15回1000字小説バトル
Entry9

回廊

作者 : 佐藤ゆーき
Website : http://www.d2.dion.ne.jp/~syuki
文字数 : 954
「ただいま」
「お帰り」
「酔っぱらっちゃった」
「誰と飲んできたの?」
「誰とでもいいでしょ」
「何だ。言えないのか」
「友達とその会社の男の人二人と」
「それって合コンじゃないのか?」
「違うわよ、私が他の男の人がいるところで飲んだらいけないの?」
「そこまで言わないけど・・・。まあ絶対に男が一人もいない飲み
会ばかりじゃないと思うし、どこから合コンでどこからそうじゃな
いかの区別をつけることも難しいからそこまでは束縛しないけど、
どうして僕に隠そうとした?やましいことがあるんじゃないかと勘
ぐってしまうだろ」
「分かったわよ。今度からはちゃんと正直に報告するわよ。それで
いいんでしょ」
「何だよ。報告さえしたら何でも好きなことをしていいという口ぶ
りだな」
「そうじゃないの?」
「だから僕は君が知らない男と酒を飲んで酔っぱらって帰ってくる
のは嫌だと言っている」
「だからさっきもう行かないと言ったじゃない」
「だからそこまでは束縛しないけど、僕が悲しんだり不安になった
りしないように、ちゃんとこういう理由で行ってくると説明してく
れてもいいだろ」
「分かったわよ。今度からはちゃんと説明してから行くことにする」
「そういう問題じゃないんだ」
「どういう問題なのよ。どうしたらいいのよ?」
「だから僕が言いたいのは、君がそういうところに行った時、僕の
気持ちを考えてくれているかどうかということなんだ。確かにいく
ら好きでも一人の人間の全てを思うようにはできないし、一人の人
間の全てに応えることはできない。でもここからは合コンだからだ
めとか、ちゃんと説明したらいいとかそんな規則みたいなことだけ
を僕らがお互いの行動の拠りどころにするのなら、何もお互いの気
持ちを思いやる必要がなくなるじゃないか。何もお互いのことを好
きでいる必要がないじゃないか。僕達はいったい何のために一緒に
暮らしているんだ?」
 テレビでは今日も戦争でお互い死にたくないし殺したくもない若
者がわけのわからないもののために大勢死んでいるニュースや、な
んの罪もない弱い者がどこかのバカの快楽のために殺されたニュー
スが流れている。そんな時に僕は何で自分の恋人に思いやりについ
て説かなくてはならないんだ?僕は僕の人生に関わる全てがばかば
かしくなって呆然とする彼女の目の前で窓から飛び下りた。






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