第16回1000字小説バトル
Entry10
日常茶飯事、私は休む間もなく働いています。御主人は仕事熱心な 方なので、私の仕事量といいましたら、御近所の安ベエやゴンザエ モンと比べたら、天と地、月とスッポンの差があるのです。 しかし、私は働けば働くほど自分の寿命を縮めてしまうのです。消 しゴム界のエリートと呼ばれた方々はみんなそうなのです。早く死 ぬのです。この世から、早く消えるのです。逆に消しゴム界の、恥 さらしや愚か者と呼ばれた消しゴムは長生きしているのです。 私は、そのことをずっと考えていました。確かに御主人様に大変可 愛がれ、エリートの道を突き進んできました。しかし、私はその分 寿命を縮め、私の消しゴムライフは終わりの一歩を迎えようとして いるのです。 確かに、安ベエやゴンザエモンは、グータラでだるがりで仕事はあ りません。でも、その分彼らは、私よりはるかに長生きするのです。 その点、私は彼らをうらやましくも思います。これまでの私といっ たらぷらいどの固まりといった消しゴムで、仕事のない彼らのこと を軽蔑し、つばを吐き捨てたこともありました。 けれども、それは間違いだったということを今なんとなく思うので す。いくら、消しゴム界のために働いたって、いくら御主人様のた めに尽くしたって、私の心は癒されることはないのです。しかも、 私の命は癒されない私の心を哀れむかのごとく削れていっているの です。 むかし、安ベエが私に言った言葉を思い出しました。 「お前は、自分をエリートだと思っているのだろう?、でもそれは お前の勘違いだ。長生きできなくて、仕事ばっかりで心が安らぐ時 間もない。それのどこがエリートだといえようか。」 今の私にはその言葉が胸の中にこびり付いて離れませんでした。 「安ベエこそ、働きもしないで、グータラで居眠りばかりしていて、 エリートと呼ばれるにはほど遠いではないか。」今、心の中で反論 したもののこの問題の結論を出すことは出来ませんでした。 結論どころか私は、一つの疑問を生み出してしまったのです。 「 エリートって何だろう???」 私は、この二四消しゴム光年生きてきて、ずっとずっとずーーと、 エリートを目指してきました。それが私の宿命であり、この世で私 が果たすべき使命だと思ってきたのです。 しかし、いくら身を削って御主人様のために働いても、いくら、周 りの消しゴムに、「すごいですね あなたこそ本物のエリートです よ」だとか「尊敬します」だとか言われても、’エリート’と実感 する事は出来ませんでした。 実感することもできず、私はただ意志もなく働くロボットのように 仕事をしていたのです。 「つらい つらい ひーひーつらいよ エリートのためだ がんば らなきゃ う、うーつらいよ エリートになるためだ」と心の底で 想いながらも。
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