第16回1000字小説バトル
Entry15
ジョルジュ・マンシーンはナイトの称号を授かった。王への忠誠 を貫くことがいかに困難で誇り高いことか、ジョルジュは彼の父か ら教わった。幼少より騎士としての教育を受けると共に、ことある 度にマンシーン家祖先の武勇伝を聞かされて育てられた。ジョルジ ュの祖祖父にあたるアブラ・マンシーンが、日照り続きの領内に用 水路を引く際に大きく貢献をした話は、父は好んで何度もジョルジ ュに聞かせた。なんでもその治水工事の時に、小さな小屋ほどもあ る大きな岩が水路に現れたのを、アブラ・マンシーンが見事にうち 砕いたというものである。その話をきくたびにジョルジュは胸が熱 くなり、自分の事のように照れくさい気分になるのだった。 正式に新しい家紋と鎧と盾の授与を済ますとジョルジュの生活に は大きな変化がもたらされた。それまでの奔放な生活とは決別して、 騎士として恥ずかしくない行動を自らに課した。 身だしなみはきちんと、騎士たるもの髪は常に櫛を通しておかな くてはならない。髪も三日に一回は洗った。服にも気を使い、御婦 人が眉をひそめるような格好は慎み、かといって流行を追うでもな く自分なりの着こなしを心がけた。騎士たるもの日頃から険、弓、 乗馬等の修練を行わなければならない。また、その道具の手入れも 怠らなかった。からからになっていることの多い、馬のジャクホン の桶に綺麗な水をいれてあげた。 毎日が充実していた。季節の花々が美しく感じられ、鳥のさえず りに耳を傾けた。今までこんな気分は味わったことがない。心が清 々しく、見知らぬ通りすがりの人にまで挨拶をした。 物置のようになっている自室の掃除も行った。いる物といらない 物に分けて、いらなくなった物は思い切って捨てて、物の絶対量を 減らすことから始めた。いる物はどこに何があるのか分かるように、 きちんと整理して収納した。それまで気が付かなかったちょっとし た額のゆがみをなおしたり、棚の埃をふき取ったりもした。 最後にベッドメイキングにとりかかった。なるべくシーツにしわ が出来ないように張り替えると、次に掛け布団を新しい物に取り替 えた。なるべくベッドの枠から垂れる、掛け布団のすその幅が同じ になるようにと、ベッドの周りをグルグル回って調整した。 しばらくそんな日々が続いたが、その年の終わりにジョルジュは 自らナイトを辞退した。どうやらナイトには向いていなかったよう だった。
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