インディーズバトルマガジン QBOOKS

第16回1000字小説バトル
Entry5

早い者勝ち?

作者 : 百内亜津治
Website : http://www.geocities.co.jp/Bookend-Soseki/1516/
文字数 : 1000
 大ホールの中は異様に熱気だっていた。相当数の人々が見守る中、
超巨大スクリーンには一組の男女の織り成す性交が映し出された。
獣のように絡み合う肢体。僕の股間はそれを見るとたちまち膨れ上
がった。僕はやけに照明のまぶしいホールの特設舞台の上に、ほか
の9人の男たちと共に着衣を何も身に付けずにいた。しかも足をち
ょうど90度開くように座って。

 国民的大行事の主人公に選ばれたことを僕に知らせてきたのは、
1枚のはがきだった。毎年恒例のこの行事には、国民の中から10人
の男が抽選で選ばれる。もし、その招待を断われば国外追放である。
それで僕も意を決してこの日を迎えたわけだ。

 今や搭のようにそびえる僕の股間を、今年のミスコンテスト入選
者の女性が握る。歓声がとどろく。スクリーンの映像が変わり、今
度は僕たちが映し出される。僕の横の9人の男たちも、それぞれ一
人ずつ女性が付き、僕と同様に握られている様子だ。女性たちは皆
水着姿だ。電工掲示板の赤い文字が、10秒前を知らせる。10、9、
8、とマイクのアナウンスの声。上方には相当数のテレビカメラ。
7、6、5、と観客も加わる。4、3、2、1。ラッパの高らかな音が
聞こえる。

 女性たちが一斉に慣れた手つきで握った手を動かし出す。僕に付
いている女性の胸が、手を動かすたびに揺れる。ああ、見ちゃいけ
ない。でも、どうしても見てしまうんだ。興奮が身体の底から湧き
出てくる。気持ちいいな。でもどうしてもいっちゃいけないんだ。
僕は目をつぶる。そのうち、もうどうしようもないくらい気持ち良
くなってきた。これじゃいけない。あ、あ……。

 「うおーっ」と僕はものすごい叫び声を上げて果てた。それと同
時に観客もどっと沸いた。「パンパカパカパン」とラッパの高らか
な音。僕が一番だったらしい。絶望の底に落とされたように感じた。
それから、僕以外の9人の男たちとその付き添いの女性たちは舞台
から降ろされた。僕は、僕のを握っていた例の女性と、2人きりで
舞台に取り残された。

 やがて、きらびやかな衣装の国王が舞台に上がってきた。「もの
のあわれじゃ」と彼は言った。僕は涙目で「早い者勝ちじゃないん
ですか?」と訴えた。「昔からのおきてだから仕方がないのじゃ」。
国王はぼくにきらきらと光る刀を渡した。「潔く、切腹いたせ」。
僕は自分の腹に刀を目いっぱい突き刺した。遠ざかる意識の中で、
歓声と共に桜の花びらがひらひら舞っているのが見えたような気が
した。






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