第17回1000字小説バトル
Entry1
2ヶ月前に部屋を出ていったサクラが、夢の中で、死んだ。 サクラは合コンで知り合った。その時は、ただ、あ、可愛いな、 と思っただけで、電話番号を交換して終わりだった。 三日くらいして、彼女が気になって電話を掛けた。丁度お互い暇 だったので、合うことにした。それで改めて喋っているうちに、彼 女という居心地のよさに気付いた。 それからすぐ僕らは付き合い始めた。兄に言わせれば、どこかに は居そうなカップル、といった感じらしい。ある意味で影の薄い、 またある意味では妙に際立った印象を与える、といわれた。確かに 僕等は街に出たところで単なる背景の一つであることを感じていた。 決して一組の男女としては認められなかった。 でも彼女は僕を本当に好きでいてくれた。何をするでもないのだ けれど、いつだって彼女の想いが僕の体内に浸透してくるのを感じ ていた。そして僕も又、好きだった。だからそれから出て行くまで の三年間はお互いの気持ちが分かり合えて、「不幸」という文字が 辞書から消え去ってしまうほど幸せだった。 それから二年半経って、僕は彼女以外に女を知らないことに恥じ らいを覚えていた。それで尚彼女を好きだったが、もっといろんな 女性を知りたい。僕はバイト先の高校生と寝た。とにかく誰でも善 かった。 その後も高校生との付き合いは続いて、ついにサクラにばれた。 善い訳も何もせず、罵られもされず、彼女は次の日、出ていった。 夢の中とはいえ、彼女が、死ぬ、と言うことはやはり悲しいことだ った。彼女は、結局、僕にとって必要だったのだ。事実、夢の中で 僕はひたすら泣いていた、何も考えず。 目が覚めて、今、これまでの経緯を書きながら、僕は彼女に電話 してみた。 なかなか繋がらない。少し間を置いて掛け直すことにして、TV を点けたら、お昼のニュースをやっていて、近所で起こったバラバ ラ殺人事件を報道していた。
![]()
◆QBOOKSに掲載の記事・写真・作品・画像等の無断転載を禁止します。
◆投稿された各作品・画像等の著作権は、それぞれの作者に帰属します。出版権はQBOOKSのQ書房が優先するものとします。
◆リンク類は編集上予告なくはずす場合がありますのでご了承ください。