第17回1000字小説バトル
Entry14
頭痛薬をくれ。 「どの薬がいいですか」 どれでもいい。 「どれでもいいと、おっしゃいましても」 どうせ全部おんなじなんだろ。 「一応アスピリンとそうでないのが有りますが」 どう違うのだ。 「アスピリンは正しくは、アセチルサリチル酸といいまして」 そんな事は聞いていない。 「では、1893年ドイツの化学者ホフマンとドレッサーが」 あのな、今それを聞いてどうなる。 「どのようなことをお知りになりたいので」 薬の種類によって効きかたが違うのか聞いているんだ。 「アスピリンはプロスタグランジンの合成を阻害する働きがありま して」 俺はな、頭が痛いんだ。小難しいことを言ったら余計頭が痛くなる だろ。 「では話題を変えて、1969年ロンドンの王立外科大学で」 歴史はいらないと言ってるだろ。 「でしたら、どのようなことを」 だから薬の違いだよ。効きはじめる時間とか。 「アスピリンは腸で吸収されますから一時間位しないと効いてきま せん。パラセタモルは胃で吸収されますから、10分もあれば」 それだよ聞きたいのは。 「パラセタモルは正しくは、N−アセチル−パラ−アミノフェノー ルといいまして」 ああ、もういい。何でもいい。とにかく一番効く薬をくれ。 「一番効く薬ですか。御予算は」 何でもいいって言ってるだろ。いくらでも出すから、これ以上頭を 痛くさせないでくれ。 「痛み止めですね」 そうだ。 「ちょっとこちらへ」 おいおい、店の奥に連れ込んでどうしようってんだ。 「大声を出されては困ります。ささ、こちらの席へ」 どういうつもりだ。俺は頭痛薬を買いに来ただけだぞ。 「この薬ですがね、先日手に入ったばっかりでして、どんな薬も目 じゃないくらいよく効きますよ。今ここで、お飲みになりますか」 ああ、飲む。今すぐに飲ましてくれ。 「お薬とお水です」 ……ふう。 「どうです、効いてきましたか」 そんなに早くは。あれ、効いてきたぞ。これは何という薬だ。 「ジアモルフィンという薬です」 正しくは、とか言って長い名前を言い出すなよ。 「ジアモルフィンが正しい名前です。通称はヘロインといいますけ ど」 ヘ、ヘロインだと。麻薬じゃないか。 「よくご存知で」 おい、そんなもの飲んだらフフ、体がエヘ、おかしくアハハ、可笑 しいなこりゃ。 「大丈夫です。少ししか飲んでいませんから」 アハハハ、面白いこと言うねあんた、ププ。少ししかだって。アハ、 人差指が挨拶してる。アハハハ、ここに何をしに来たんだろ、ボク。
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