第17回1000字小説バトル
Entry15
木屑の匂いがする赤いスイッチのついたベルトコンベアの前にいる。 ベルトコンベアの流れる先の両側には、円形の刃が薄黒く光を放っ ている。 僕は、いつも厚手の長袖の服を着て、手をポケットにしまい、腕を 隠すように生活をしている。 蝉の声にまいってしまうような夏の日でも決して、半袖といったた ぐいの服を着ることはない。 別に暑さを気にしないからというわけではないし、また、腕にアザ があったりするわけでもない。 ただ、腕を見せることが恥ずかしいのだ。 小学校生の頃は、遠足の写真などを見ても、ごくあたりまえのよう に半袖の服も着ていた。 それが、いまでは指先を見られるのさえ恥ずかしくてたまらない。 今となっては誰にも腕をみせることなんて無理だと思うようなった。 僕に彼女と呼べる女性ができるとは思わなかったが、はじめての彼 女ができた。 彼女は、僕が腕を見せてくれないということ、それよりも腕を誰に も見せないといったことをたぶん気にするだろうと思う。 赤いスイッチを押した。 決して心地良いとはいえない機械の作動音がした。 僕は、服を脱いであお向けにベルトコンベアに横になり、両腕を左 右に広げた。広げられた両腕は、白く美しかった。
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