第17回1000字小説バトル
Entry18
「やっぱり大型にしようかなぁ」 課長の家は庭どころか、アパート暮らしだから、当然犬なんて飼 えなかった。それがつい最近、一戸建てを買ってしまった。 もちろん会社に通うのに、3時間近くかかる辺鄙なところだ。い くら犬が好きだといっても、その為に生活を犠牲にするなんて、俺 には考えられない。 もっともウチの給料じゃ、いくら課長でも都内に庭付きの一戸建 てなんて、夢のまた夢。まぁ、奥さんも犬好きらしいし、子供もい ないんだから、個人の自由ではあるがね。 課長の犬好きはちょっと度が過ぎるんじゃないだろうか。結局ラ ブラドールとかいう犬を買ったようだが、中古の車が買える金額を 払ってまでなんて、俺には考えられない。 しかも餌は、缶詰じゃなくて、本物の肉(牛)をやっているらし い。しゃぶしゃぶだって、トンしゃぶの方が美味いのに…。(と家 の食事に文句を付けても、稼ぎが悪いだけだと女房には言われるだ ろうから、これは内緒だ) しかも、ジェフ(日本に住んでてなんで外国の名前なんか付ける のか、その心理がわからない)を、調教だか何だかに預けていて、 寂しいなんてほざいていた。バッカじゃなかろか。犬なんてものは、 その辺を走らせて、残飯食わせてりゃいいんだ。胃の調子が悪くな りゃ、その辺の草でも食って自分で直す。それが正しい犬の飼い方 だ。なのに学校に入れるなんて考えられない。自分で教育しろ! 課長がニコニコしながら、俺に話かけてきた。うちの【ドッグ】 が【ステイ】を覚えた。うちの【ドッグ】が…。もう「イヌ」って 言えよ。ステイだとか、ゴーだとか、お前は日本人だろ! なんと、調教から帰ってきた課長の犬への指示は、全部英語らし い。なんの為の飼い犬なんだ。オタクは英語出来たっけ? まぁ、 俺も課長の話を、ニコニコしながら聞いているんだけどね。これも 仕事だと思ってるから、仕方がない。課長は俺も犬好きだと思って いるらしいが、勘違いもはなはだしいぜ。 俺は人事から、課長昇進の内示を貰った。もちろん今までの課長 とは別の課で、彼はそのまま。フン。これで心置きなく、犬の話を 断れる。なんといっても、俺はネコの方が好きだ。 「今度課長だって? イヤおめでとう。ところで君は、ドッグは飼 わんのかね?」 俺が内示を貰ったと知った課長が、仲間を増やしにやってきた。 俺はニヤリと笑って答えた。 「マスタードとケチャップをたっぶりつけたのが、いいですねぇ」
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