第17回1000字小説バトル
Entry3
笑ってる 笑ってる 君は笑ってる 足をぶらぶらさせた格好で君はその手摺に座っている 君の後ろは綺麗な青空 ぼくはただ黙ってそれを見ていた、君の目の前で君の背中をただジ ッと その背中の下にはボロボロにされたノートや教科書のはいった鞄が 置いてあって、ぼくも其処の隣に自分の鞄をおいた 君は歌を歌い出す ぼくはその歌を聞いていた 何の歌だろう 小学校でならったよなあ、こんなところで歌う感じの曲じゃあない ぞ もっと明るい緑の丘で… 「なんでそこにいるのさ」 こっちを見ないで君が云った、乾いた澄んだ声 「別に」 「同情なんてして欲しく無いけど」 「同情じゃ無いさ、今日天気いいし」 ああ、そう云って君は空を見た、空があの真夏の入道雲を仰ぎ見た 時より近くなっている、雲一つない空 また歌を歌ってる君 小さい背中をジッと見ていた 空なんて見ちゃいない、見ているのは君の背中 「いきたい?」 「何処に?」 不意のぼくの問いに君は振り向いた 笑ってる 笑ってる君の顔 「ウン?歌ってたから」 「ああ、いきたいなあ」 「いきたい?」 2度目の問い 「ううん」 今度は君は首を振った 「そっか」 少し失望した、君はもっと強い人だと思っていた、でも安堵する ぼくの仕掛けた罠にこんなに簡単にはまってしまうような人だとは 「じゃあ、いきたい?」 少し声が震えてしまった 君がこんな人だなんて、繊細な人だったなんて じゃあどうしてぼくを苛めていられたんだい? あんなに辛いって、苦しいって、止めてって何度も頼んだじゃない か でも2人きりの時君はとても優しくて、だから甘えてしまったけれ ども それが君の責任の取り方だったのかい? 今になって思うよ、君は中心的に見えたけど、きっとまるきり違っ ていたんだね、でも そうだね、罠は仕掛けてしまった その責任は取らなきゃね ぼくが望んでいた友達に君はなってくれていたから ぼくも君の望んでいることをしなくちゃね 「独りでいくの?」 ぼくは手摺に寄り掛かって君の顔を見た 背中を見るのはもう止めた、だって君の答えは分かってる 君は笑ってる 笑ってる ならんで手摺に腰掛ける ぼくも笑った 君と一緒に笑った そして歌を歌う 小学校の時習った歌で、そうだ、君と帰る時いつも歌っていたね どうして忘れていたんだろう、ばかだな、ぼくは 「いこうか?」 「うん、いこう」 そうして2人で思い切りあの空に舞い上がった
![]()
◆QBOOKSに掲載の記事・写真・作品・画像等の無断転載を禁止します。
◆投稿された各作品・画像等の著作権は、それぞれの作者に帰属します。出版権はQBOOKSのQ書房が優先するものとします。
◆リンク類は編集上予告なくはずす場合がありますのでご了承ください。