第17回1000字小説バトル
Entry9
あの二人は……もう15分も無言だ。多分、女の子の方が怒ってい るのだろう。男の子は落ち着きもなくそわそわしている。僕は約束 の待ち合わせに30分も前に着いてしまい喫茶店でコーヒーを飲みな がら時間を潰しているのだが、その店に入った瞬間からその席のこ とが気になっていた。やることもないので、気が付かれないように 注目しているのだが、一向に動きがない……こういうものを見てい るのは何とももどかしいものだ。あまりにも動きがないので、その うち僕は勝手にあの二人の直面している問題について想像しはじめ た。 男の子は多分まだ大学生だろう。女の子の方は……まだ20前後 だと思うがOLでもやっている感じだ。直面してる問題なんてオー バーな表現をしてしまったが、あの恋する二人にとってはとても重 大な局面なのだろう。原因は男の子が合コンに行ったことによって 生じた。大学生で遊びたい盛りだからまぁ仕方ないような気もする んだけど……それに対して女の子は「何故、私だけを見てくれない の?そんなに他の女の人と遊びたい?」と食ってかかった。男の子 は「人が足りないっていうから付き合いで行っただけだよ」と言い 訳をした。そんな言い訳が通用するはずがない……そして問題はよ り深い所へと進んでしまったのだろう。ここまで考えたところで、 男の子の携帯電話が鳴った。あーなんて悪いタイミングだろう、僕 は人事ながらそう思った。自分でもこのような時に電話が鳴ったら 気が狂いそうになるぐらい動揺するだろう……男の子は、携帯電話 が鳴っているのを無視していた。状況はますます深刻化している… …僕は他人の不幸を楽しむかのように、いろいろ想像をしていた。 そんなこんなのうちに、約束の時間になってしまったので席を立 とうとした時「ふぅー黙っているのってやっぱり苦痛ね」と女の子 が言った。それに対し「またお前の負けだ、コーヒーご馳走ね」と 男の子が嬉しそうに言った。 ……なんてこった……僕は30分もあらぬ想像をして楽しんでたのか。 僕はちょっと悔しかったが、幸せな気分にもなれた。30分も時間を 潰せたってことと、あの二人が今とても幸せな状況にあるってこと がわかったからだ。 僕は、急いで勘定を済まし待ち合わせの場所へ急いだ。彼女はま だ来てないようだった。また洋服選びにてこずって遅刻のようだ。 しかし、僕は彼女に会って笑いながらさっきの出来事を話すだろう。
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