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第18回1000字小説バトル
Entry2

「1000字本格推理小説」 Ver. Momo

作者 : Momo
Website : http://www.geocities.co.jp/Bookend/2767
文字数 : 1000
「つまり、密室だというんだね?」
 俺は不機嫌な声をあげた。密室だから不機嫌なのではない。早過
ぎる状況判断が嫌いなのだ。
 電話の向こう側で報告は続く。
 被害者は一人暮らしの女性。
 窓には掛け金、扉にはチェーン。
 指紋は被害者のもののみ。拭われた跡はない。
 食卓の二人分の食事、火に掛けたヤカン。
 死因は出血多量、刃物でメッタ刺しだ。
 切り落とされた手に握られた受話器は電話線も切れている。凶器
は見つからない。
 発見者は夕食に招かれていた被害者の友人の女性。
 約束の夕方7時にやってきたが呼び鈴に応えがなく、裏庭にまわっ
てリビングルームを覗き込んだところ倒れている友人が見えたため、
窓を割って進入、異常を確認した。
 彼女が6時頃に携帯で時間の確認をして被害者と会話を交わしてい
るため、犯行時間は6時から7時に特定される。電話会社には通話の
記録照会済み。検死の所見もその時間帯を示唆している。
「警察への連絡は何時頃?」
 友人は初めに救急車を呼び、事件性に気付いた救急隊員が警察への
連絡を促したという。連絡があったのは7時20分頃。窓を割るのに手
間取ったらしい。
「部屋の電話は使えないんだね?」
 友人は窓から一度外に出て自分の携帯電話を使い、救急車が到着する
まで部屋には戻らなかったと言う。
「仮に犯人が部屋の中に潜んでいたとすればその時間に?」
 窓は小柄な女性がやっと通れる大きさで、可能性は薄いとか。
「その友人に話は聞けるかな?」
 取り乱していたため病院で鎮静剤を与えられて落ち着いてきたとこ
ろだが、まだ事情聴取は医者に止められているらしい。
「割った窓の防犯加工は?」
 進入される可能性のある窓は針金が通されていたり、二枚ガラスで
あることが多い。女性が簡単に割れるものではない。
「リビングの窓に傷?」
 初めに割ろうとした大きな窓が強化ガラスだったので、床近くの小
さな窓を割ったらしい。発見者の手足には狭い窓をくぐった時に床の
破片で切った傷が無数にあったという。
「外に出た時もそこから?」
 現場保存を考えたそうだ。
 救急車が来た時に更にもう一度窓をくぐって、中から扉のチェーン
を外したらしい。
「……現場保存ねぇ。窓の四隅の破片、どうなってる?」
 取り乱していたのに現場保存?
 窓ガラスを外せるようにしておいて出入りし、後で割ってしまえば
証拠は残らない。
 四隅が枠に残っていないなら……。

 だが、携帯に全神経を傾けて運転していた俺は赤信号に気付かずに
……。






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