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第18回1000字小説バトル
Entry22

ミステリーサークル

作者 : 羽那沖権八
Website : http://www.geocities.co.jp/Bookend-Soseki/4587/
文字数 : 1000
「へえー、すっげー」
 永野浩一が小学校に持って来た本を、皆は額を付き合わせて覗き
込む。
 そこには、イギリスで発見されたという麦畑のミステリーサーク
ルの写真が載っていた。
「これって、UFOのちゃくりく後なんだろ?」
「プラズマだってはなしもあるよ」
「カマイタチだって」
「にんげんには作れないカタチなんだよな」
 群がるクラスメイトたちを横目に見ながら、中井義雄は鼻で笑う。
「それって、イタズラだったんだぜ。知らないのか」
「なんだよ、インチキだっていうのか」
 浩一は義雄に詰め寄った。
「大分前の新聞にのってたぜ。たった二人で作ったって」
「だ、だとして、せかいじゅうにあるんだぞ、二人でそんなことで
きるのかよぉ」
「バカだな、その二人のやってるのを真似したに決まってるじゃな
いか」
「じゃあ、これはどうなんだよ」
 彼は別のページをめくって突きつける。
「このミステリーサークルができたときには、だれもいなかったっ
ていうぞ。これはUFOがいたしょうこじゃないか」
「それじゃ、そのUFOを見た人は?」
「み、見えないUFOだったんだよ!」
「だったら何だって言えるじゃないか。僕は百億万円持ってるぜ、
お前には見えないとこにね」

 その日の晩。
「ただいまー」
「あっ、パパね」
 母親が食卓を立ち、義雄もそれに従って父親を出迎える。
「お帰りなさい」
「玲子、義雄、ほらこれ!」
 父親は内ポケットから一通の封筒を取り出した。
「辞令? まあ、昇進じゃない!」
「ああ。給料もかなり上がるらしいよ」
「へえ、パパすごいね」
「ははは、凄いだろう。同期よりもずっと早い出世なんだぞ」
 芝居っぽく父親は自分の胸を叩く。
「さあ、ご飯にしようか玲子」
「ええ、そうね」
 父親と母親がダイニングに向かおうとした時。
「――あれ、パパ」
 ふと、義雄はそれを見つけた。
「なんだい?」
「頭の後ろのとこ、禿げてるよ?」
「え? まだパパはそんな歳じゃないぞ、ははは」
 母親が父親の後頭部を確認する。
「あらパパ、本当よ。円形脱毛症ね」
「ええっ……」
「確か円形脱毛症って、強いストレスでできるんだよね? なんで
パパに――」
「何言ってるんだい義雄、ス、ス、ストレスなんか、ないぞぉ!」
 固い笑いを浮かべ、父親は後頭部の円に手を当てた。
「そうよね、妻の、あたしと義雄が待ってる家に帰るんですもの、
カケラほどのストレスもないわよねぇ」
 母親はにっっこり笑った。
「さ、ご飯にしましょ」






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