インディーズバトルマガジン QBOOKS

第18回1000字小説バトル
Entry26

俺は文才

作者 : 太郎丸
Website : http://www.toshima.ne.jp/~takuto_k/index.html
文字数 : 1000
 俺は文才。物書きが書く時に言葉にする能力だ。人は誰でも持っ
ている。作者のイメージを言葉に変換する。
 俺の主人は、貧乏の上に風采も上がらないから、今まで浮いた話
しも全くない。人生経験も少ないのに、俺が文章を紡ぎ出せる訳が
ないのを、知らないようだ。せめてバイトの一つや二つ、やってい
るのならまだしも、暗いし社交性もないから、バイト経験さえない。
 俺は今まで暇を持て余していたんだが、この主人、何をトチ狂っ
たか小説を書き始めた。
 そんな俺が最高の状態になれるはずがない。しかもこいつは官能
小説を書こうと思っているらしい。主人は今までポルノを読んだ事
もなければ、映画も見た事が無い。それなのに、ひょっとしたら売
れるかもなんて、バカな考えに取りつかれたようだ。
 まぁ、こいつの頭の中に浮かんだ情景を、ただ俺の言葉で表現す
るしかないだろう。

 和服の女が(いや)肌襦袢姿の女が縛られていた。(うーん)ピ
ンク色の肌襦袢だけを引っ掛けた女が、両手を縛られていた。
「いや!」
 突然女が叫んだ。すると女の口に黒い皮の手袋をした毛むくじゃ
らの手が横から出てきて、覆った。(大写しのイメージを俺が男を
辿ると、主人の顔だった。なんだ自分の小説に自分が登場か。まぁ
想像力のない男だから、仕方がない。しかし奴は毛むくじゃらじゃ
無いから、一応想像はしてるんだろう。だがこの女は近所に住む女
子大のかわいこちゃんだ。ったく。和服姿を想像するなよな。無か
らねぇじゃねえか)

 男は近くにあったタオルを、グイグイと女の口に詰めこんだ。
「大人しくしないと、痛い目を見るぜ」
 男は下卑た笑いで、女の襟元を一挙にはだけた。
(ちょっと変かなぁ。まぁいいや。どうぜ奴には変なところは判ら
ない)

 女の豊満な(いや)たわわな(変だ)むっちりとした(これだ)
胸(いやいや)乳房が、男の目の前に、私を吸って(…)私を…?
犯してと(そんな訳ない)男の目の前に、踊り出た。(?…まぁい
いや)
 男は乳房に吸い付くと、「美味え」(おいおい、本当に美味いの
か?今まで乳房に吸い付いたことないだろ)と一声発すると、女の
股間に顔を埋めた。(えっ?どうするの?)

 女の股間(股間ってのも変だよなぁ…)に舌を挿し入れ(えぇ?
舌をどうするんだよ?股間だって…? 多分毛があって…
 ワレメ?
 アナ?
 あっ!「ビーナスの誕生」…? ダメ。髪の毛で隠れてる。

 主人は、6行書くと諦めた。






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