第18回1000字小説バトル
Entry32
昼寝から起きると野島くんが縁側で妻と話をしていた。宇宙なら 何をしてもいいって言うんでしょうか、と野島くん気炎を上げてい る。目元の涼しげな娘さんだ。いくら無重力だからって、そんなシ コなんて。妻が微笑みながら焼きたてのほっけを勧める。根室のほ っけ。新刊を出すたびに熱心な感想を送ってくれる根室の石橋さん。 気持ちのいい漁師である。 ほっけをつまみにビールを1本。野島くんは2本飲んだ。父の晩 酌に毎晩付き合わされるんです、と嬉しそうに笑う。じゃあ夕子ち ゃんはきっとお父さまみたいな方と結婚なさるのね、と妻が云った。 無花果の下で蛇が長々と横たわっている。 妻が台所仕事を始めたので、野島くんと性交。6畳間に布団を敷 き直して後ろから2回。動きに切れのある気持ちのいい高校生だ。 3回目は勘弁してもらい、長々と横たわる。昼寝の温もりが布団に 残っていて、嬉しい。 夕飯はほっけをつまみにビール。1本飲みきれず、残りは妻に飲 んでもらう。最近台所でひそかに飲酒訓練をしているらしく、軽々 と飲み干してしまう。頼もしい。明日、新井さんに頼んでクッキン グワインを補充してもらおう。新井酒店。いくら飲んでも眠れない 夜、シャッターを叩くとさり気なくモルヒネを手渡してくれる。 夜の散歩。次女夫婦からもらったレッグウォーマーを巻く妻。足 が引き締められてはきはき歩ける、と喜んでいる。ピンクの地にち りばめられたラメが車のライトに反射して、楽しい。うなりを上げ て国道を蛇行していた若者らが交差点でセダンを取り囲む。ブーツ で蹴り上げられた車体がみるみるへこんでいく。やがてセダンから 若い女が引きずりだされた。勇ましい若者たちである。 綾瀬川のブタ草が秋にも花を咲かせるようになった。川原におり て妻と二人で鎌をふるう。お陰さまでこの歳まで花粉症というもの に悩まされたことはないが、近所の子供たちが気掛かりだ。川原で 遊ぶときにマスクをかけさせる親御さんもいるようだ。せっせと鎌 をふるう。妻が、春までに何メートル刈り進めるかしら、と云って 笑う。春には春のブタ草が咲く。 寝床に入る前に少し仕事を進めておく。途中で一ヶ所不明瞭な記 述にぶつかり、どうにも気になって気持ちが悪い。夜分遅くに大変 失礼ではあったが30年来の友人である佐川に電話。佐川は去年亡 くなりましたが、と奥さんの声を聞いて葬儀での手厚いもてなしを 思い出す。塩水でうがいをして、寝る。
![]()
◆QBOOKSに掲載の記事・写真・作品・画像等の無断転載を禁止します。
◆投稿された各作品・画像等の著作権は、それぞれの作者に帰属します。出版権はQBOOKSのQ書房が優先するものとします。
◆リンク類は編集上予告なくはずす場合がありますのでご了承ください。