第18回1000字小説バトル
Entry9
ざわざわ。今日はこれから本番である。人間が私たちを取り囲み、 一つ一つ準備をしていく。まだ明るいのに、シートを敷いて場所を とる人間達。 「いよいよだなぁ」 「これでおれたちの価値が決まるってわけだ」 「華々しく散ろうぜ」 「おうよ。おれ達が生きた証を残す、最初で最後のチャンスだ」 仲間達は、死への恐怖ではなく、最後の生き様への羨望でいっぱ いだった。先輩達の話をたくさん聞かされた。オレンジ色の輪を作 り果てていった。少しずつ鮮やかな光を発するようになった歴史。 赤や紫、緑の輝きの誕生。まっすぐに星をめがけてかけ昇り、気合 いもろとも己のすべてをまき散らす。 一瞬ですべてが終わる。川の水面を、人々の眼を、かわいた田畑 を眩くし。最後の雄叫びが、たった一つの自己主張。雄々しく果て るが私たちのしつけ。 果てることなどおそれはしない。変えようのないものを、望みは しない。だが、どう果てるかは私が決める。人間よ、我が神よ。あ なたは私に愛情をたくさん注いでくれた。丁寧に、熱心に研究して 作成してくださった。私はほかのものよりも大きく、美しく輝くよ うに作られたのだろう。皆が私に期待している。鮮やかな彩りと、 ひときわ大きな太鼓の音。 だが神よ。私はあなたに牙をむく。どれほど人を喜ばせようと、 どれほど人から称えられようと、私はそれを望まない。私は無音で はじけて、闇色のくすんだ埃を夜空にまこう。もしもそれができる なら! 私よ、我が身よ。最後に私と共にあれ。私の意志と共にあれ。私 は願う。輝かぬことを。私が私を決められることを。どうか、失敗 作と呼ばれますように。
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