インディーズバトルマガジン QBOOKS

第18回1000字小説バトル
Entry9

打ち上げ花火の夜は暗く

作者 : 羽倉諒
Website : http://www.net-ibaraki.ne.jp/ventulus/index.html
文字数 : 669
 ざわざわ。今日はこれから本番である。人間が私たちを取り囲み、
一つ一つ準備をしていく。まだ明るいのに、シートを敷いて場所を
とる人間達。
「いよいよだなぁ」
「これでおれたちの価値が決まるってわけだ」
「華々しく散ろうぜ」
「おうよ。おれ達が生きた証を残す、最初で最後のチャンスだ」
 仲間達は、死への恐怖ではなく、最後の生き様への羨望でいっぱ
いだった。先輩達の話をたくさん聞かされた。オレンジ色の輪を作
り果てていった。少しずつ鮮やかな光を発するようになった歴史。
赤や紫、緑の輝きの誕生。まっすぐに星をめがけてかけ昇り、気合
いもろとも己のすべてをまき散らす。
 一瞬ですべてが終わる。川の水面を、人々の眼を、かわいた田畑
を眩くし。最後の雄叫びが、たった一つの自己主張。雄々しく果て
るが私たちのしつけ。
 果てることなどおそれはしない。変えようのないものを、望みは
しない。だが、どう果てるかは私が決める。人間よ、我が神よ。あ
なたは私に愛情をたくさん注いでくれた。丁寧に、熱心に研究して
作成してくださった。私はほかのものよりも大きく、美しく輝くよ
うに作られたのだろう。皆が私に期待している。鮮やかな彩りと、
ひときわ大きな太鼓の音。
 だが神よ。私はあなたに牙をむく。どれほど人を喜ばせようと、
どれほど人から称えられようと、私はそれを望まない。私は無音で
はじけて、闇色のくすんだ埃を夜空にまこう。もしもそれができる
なら!
 私よ、我が身よ。最後に私と共にあれ。私の意志と共にあれ。私
は願う。輝かぬことを。私が私を決められることを。どうか、失敗
作と呼ばれますように。






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