第19回1000字小説バトル
Entry18
渋谷ハチ公前15時30分。 シューコー、シューコー。 今、私は友達を待っている。 周りを見ると、みんな、昔の映画に出てくる宇宙飛行士のような、 白いライフスーツを身に付けている。 もちろん私も同じものを着ている。 10年ほど前に起きた、世界最大の原子力発電所の大爆発。 それによってほとんどの生物がいなくなってしまった。 青かった地球は放射能によって汚染され、白く不気味に輝く死の星 になってしまった。 これを着けないで外に出れば、放射能に汚染され死んでしまうのだ。 それにしても、みんな同じだな。 同じ服、同じ色、同じ音。 突然だがあなたはこういう夢を見たことがあるだろうか? ある日、自分の部屋で私じゃない別人がいる。 そいつは家族とも友達とも普通に私としてすごしているのだ。 私は一生懸命、みんなに私の存在を、そいつが別人であることを伝 えようとするが、声が出ないし誰も気がつかない。 そういう夢を見たときは必ず、このライフスーツを脱ぎ捨てたくな る欲求に駆られる。 このライフスーツを着ている限り、自分は誰でもいいような気がし て。 「これを脱げば・・・」 しかしそんな事、私には絶対に出来ない。 なぜなら、この誰もが同じ光景を見ると、なぜか安心するからだ。 このライフスーツを脱いだ後、自分が自分として存在しているのか 不安だからだ。 私は異常なのだろうか?それともこれが普通なのだろうか? あなたならこの、白いライフスーツを脱ぐことができるだろうか? それとも私と同じように、周りと同じ、白い色のまま、安息を得た いだろうか? この安息は本当の安息なのだろうか? 「ごめーん。待ったー?」 友達が来た。 「ううん、私も今来たところだから。どこいこっかぁ。あっ、みん なで踊りに行こうか」 「あ、いいね、いこいこ」 白いライフスーツを来た二人が白い人波に飲み込まれ、オレの前か ら消えていった。 それにしても、あんなこと見つめられて言われてもなぁ。 オレ、ハチ公だし。
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