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第19回1000字小説バトル
Entry3

ガングロオリジン

作者 : 有馬次郎
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文字数 : 996
私の名前は、炭子。

1年前に東京の某短大に入学した19歳の普通の女の娘。出身は和
歌山県新宮市。
祖父は地元でも有名な炭焼き職人だ。そして、幼い頃死別した両親
に代わって私をここまで育ててくれた。
備長炭を焼き、私にその技を伝承しながら。

五歳の頃から窯入れ窯出しを手伝っていたせいで、私の顔は炭に負
けないくらい真黒になった。髪は遠赤外線で火焼けして、山姥の様
だ。顔は黒いけど、瞳と歯並びだけは、今でも強かな自信がある。
ただ、窯の側の生活が長かったので、体の発汗作用は人一倍だ。よ
く汗をかいては、憂鬱になったりもする。冬でも地下街やアーケー
ドを歩くだけで、顔中汗だくだ。

入学したての頃、テレビで志村のバカ殿みたいに真白なおばさんを
見て、これだと思った。それから美白パウダーは私の必須アイテム
になってしまった。

真白になって初心にかえって、髪の毛は山姥のままだったが、何と
なく自信が出てきた。横浜、新宿、原宿、渋谷、池袋、銀座、千葉
埼玉どこへでも、顔に汗をかいて出かけた。

私にとっては、金の粉が天から煌々と降り注ぐなかを軽いステップ
でふわふわと移動している感触だった。
この様な甘いウキウキとした、そしてかけがえのない切ない感覚。
時間そのものが、煌めいてながれた。

まさに私の”シュガータイム”の季節だった。
今の彼に、わざと汚い化粧をしてるんだね、でも似合っていると、
愛を告白されたのもやはりこの時期だ。

街行く私を見て、皆が振り返ったり、振り向いたり、手を口の前で
交差する松本伊代みたいな驚嘆の表情を浮かべたりするのを見て、
ますます自分の顔に自信を深めた。空を真っ直に見上げて歩いたり
もした。

いつの頃からか、女子高生や中学生からサインをねだられたり、写
真に撮られたり、いっしょに写真に納まったりもした。
まるで何かの宗教の教祖にでもなった様な雰囲気が私の周りに醸し
出され、心底気持ち良かった。

しかし最近おかしな事に気がついた。何か、パラサイトみたいな変
な化粧のコギャル、マゴギャルがメトロでもJRでも出現し始めた。

よくよく考えると、私の化粧パターンのパクりかとも思うし、もっ
と別な深い畏敬からくる自己同一化...?。洗脳化。虚無。反逆。

まあ、でも気にはしていない。私の場合は、単に汗で化粧が落ちた
だけのことだから。彼女らとは一線を画している。
そう、もっと自分に自信を持とう。

私の瞳と歯並びだけは、誰にも負けないのだから。






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