第19回1000字小説バトル
Entry30
「何という現金なやつだ」と勘竹警部は言った。その死体は人間で あった頃を想像するのにかなりの空想力を必要とする。人一倍空想 力の強い人竹巡査は、必要のない領域にまでその空想の翼を延ばし 失敗していた。人竹の背中を優しくさすりながら勘竹は言い放った。 「かなりの借金を抱えていたな」動揺した観衆をさらに揺るがす術 を彼は知っていた。青年実業家である。卑屈な被害妄想である。彼 は泣き母の面影を思い出し、涙目で歌いながらフレヒス姿は元祖納 豆菌と言わざるを得ない。 その頃、交通渋滞に巻き込まれていた私は全くと言っていいほど 好奇心というものが無かった。生まれ持ったその才能は親父譲りだ と人は言う。しかし彼は、そんなことは全く気にもとめずにただひ たすら走り続ける。今日はバーゲンセールで朝鮮人参を5、6本買っ てきていた。まったくの無精者である。末広がりである。きっと東 京からやって来たばかりの事など覚えてもいないのだろう。 「ダメダメ、あっち行って」突然我々は、無愛想な警備員に追い出 された。写真撮影禁止であった。なら仕方ないか、と妥協するお前 が今日も愛おしく見える。庭にはバラが咲いている。この汚れた空 気でよく咲かせるもんだなあと、いつも父は言っていた。それもそ のはず、父は心筋梗塞であるからだ。その上6万$の賞金首でもある。 私はそんな父を尊敬してやまなかった。父は延髄斬りの名手でもあ った。私は父が休みの日には仕事の疲れが抜けない父に無理に延髄 斬りをねだったものだ。それはいつもいい所に入るし、時にはカウ ンターでもあった。時々血ヘドを吐いて倒れることもあったが、私 はそんな父を少なからず軽蔑していた。だって、震えが止まらない んですもの。 「有頂天になれ!」が父の口癖だった。気持ちが悪くて爆発したあ の日。年中無休で不眠不休な押し売りを撃退するための本の執筆で 忙しかった。インクで汚れた顔をますます汚すその顔つきで迫って きたとき、私はハッとして目を見開きサングラスの奥からスプレー を取り出した。閑古鳥が鳴いている。見よう見まねで泣いている。 漢字の変換を怠っていたことはすでに上司にばれているだろう。様 々な憶測が飛び交った中で僕らはどこへ行くのだろうか。彼は自分 のまぶたがめくれてきていることに気がついているのだろうか? 出会いはいつも偶然に、しかし必然の檻の中で僕たちはくらして いることを忘れてはならない。そこにアイツはきっといる。
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