インディーズバトルマガジン QBOOKS

第19回1000字小説バトル
Entry30

醜態の元凶

作者 : ぱんち
Website :
文字数 : 999
「何という現金なやつだ」と勘竹警部は言った。その死体は人間で
あった頃を想像するのにかなりの空想力を必要とする。人一倍空想
力の強い人竹巡査は、必要のない領域にまでその空想の翼を延ばし
失敗していた。人竹の背中を優しくさすりながら勘竹は言い放った。
「かなりの借金を抱えていたな」動揺した観衆をさらに揺るがす術
を彼は知っていた。青年実業家である。卑屈な被害妄想である。彼
は泣き母の面影を思い出し、涙目で歌いながらフレヒス姿は元祖納
豆菌と言わざるを得ない。
 その頃、交通渋滞に巻き込まれていた私は全くと言っていいほど
好奇心というものが無かった。生まれ持ったその才能は親父譲りだ
と人は言う。しかし彼は、そんなことは全く気にもとめずにただひ
たすら走り続ける。今日はバーゲンセールで朝鮮人参を5、6本買っ
てきていた。まったくの無精者である。末広がりである。きっと東
京からやって来たばかりの事など覚えてもいないのだろう。
「ダメダメ、あっち行って」突然我々は、無愛想な警備員に追い出
された。写真撮影禁止であった。なら仕方ないか、と妥協するお前
が今日も愛おしく見える。庭にはバラが咲いている。この汚れた空
気でよく咲かせるもんだなあと、いつも父は言っていた。それもそ

のはず、父は心筋梗塞であるからだ。その上6万$の賞金首でもある。
私はそんな父を尊敬してやまなかった。父は延髄斬りの名手でもあ
った。私は父が休みの日には仕事の疲れが抜けない父に無理に延髄
斬りをねだったものだ。それはいつもいい所に入るし、時にはカウ
ンターでもあった。時々血ヘドを吐いて倒れることもあったが、私
はそんな父を少なからず軽蔑していた。だって、震えが止まらない
んですもの。
「有頂天になれ!」が父の口癖だった。気持ちが悪くて爆発したあ
の日。年中無休で不眠不休な押し売りを撃退するための本の執筆で
忙しかった。インクで汚れた顔をますます汚すその顔つきで迫って
きたとき、私はハッとして目を見開きサングラスの奥からスプレー
を取り出した。閑古鳥が鳴いている。見よう見まねで泣いている。
漢字の変換を怠っていたことはすでに上司にばれているだろう。様
々な憶測が飛び交った中で僕らはどこへ行くのだろうか。彼は自分
のまぶたがめくれてきていることに気がついているのだろうか?
 出会いはいつも偶然に、しかし必然の檻の中で僕たちはくらして
いることを忘れてはならない。そこにアイツはきっといる。






インディーズバトルマガジン QBOOKS
◆QBOOKSに掲載の記事・写真・作品・画像等の無断転載を禁止します。
◆投稿された各作品・画像等の著作権は、それぞれの作者に帰属します。出版権はQBOOKSのQ書房が優先するものとします。
◆リンク類は編集上予告なくはずす場合がありますのでご了承ください。