インディーズバトルマガジン QBOOKS

第19回1000字小説バトル
Entry31

夢と魔法の国

作者 : もんでん琴戸
Website :
文字数 : 957
 とある町に、「夢と魔法の国」という人気のテーマパークがあり
ます。このテーマパークのマスコットであるネズミのマッピーは、
毎日華やかなダンスショーやパレードなどのイベントで、子供達に
夢と希望を与えている人気者で、子供達はマッピーを見つけると、
大喜びで握手を求めて集ってきます。

 ある日、マッピーがいつものように子供達に握手をしていると、
一人の子供がマッピーを指さして言いました。
「マッピーは縫いぐるみやで。中に人が入っとんねん」
 マッピーは自分のことを、縫いぐるみだとは思っていません。真
剣にネズミのマッピーだと信じているのです。しかしこの言葉によ
って、マッピーは自分の存在に疑問を持ち始めました。

 その晩、いつも身の回りの世話をしてもらっているタナカさんに
聞きました。
「タナカさん、僕の中には人が入ってるの?」
 タナカさんは一瞬驚いた表情で、しかしすぐいつも笑顔に戻って
こたえました。
「子供達の夢を壊すようなことを言っちゃいけないよ。マッピーは
マッピーだろ?世界で一匹しかいないネズミなんだよ。気にしない
でゆっくりお休み」

 しかし次の日、マッピーは偶然タナカさんの部屋から漏れる会話
を、盗み聞きしてしまいます。
「部長、マッピーの奴が自分は人間ではないかと疑っています」

「それはまずい。もし奴の記憶が戻って自分が人間だと気づけば、
マッピーの情報が外部に漏れる恐れがあるな。我社は子供達に夢を
与えているんだ。マッピーの中に入る子供は完全にマッピーになり
きってもらわなければならん。ちゃんと薬は投与しているのかね」

「はい、それは週一度必ず。ただマッピーも八年目ですから、そろ
そろ過去の記憶が戻る頃かもしれません」

「そうか、それじゃそろそろ交代だな。後任は?」

「はい、マッピーに合う体型をした、身寄りのない12歳の男の子
を一人、施設から引き取りました。すでに薬を投与してありますの
で過去の記憶はすべて消され、本人も今は完全に自分がネズミのマ
ッピーであると信じ込んでいます。あとはダンスを教えればいつで
も」

「わかった。成長抑制剤は忘れないでくれよ。マッピーが成長する
わけにはいくまい」

「もちろんです。今のマッピーはどうしましょう」

「新マッピー完成次第、処分しろ」

 この会話で、マッピーは自分の過去を思い出し、二人に復讐を誓
うのでした。
 






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