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第19回1000字小説バトル
Entry4

夏の真珠

作者 : 夢月 霧 [ゆめづききり]
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文字数 : 841
 それが偶然か必然かは分からない。ただ一つ言えることは、彼女
がそこにいたということだけだ。八月でも高原の夜は寒いのに,彼
女は肩の出た服を着ていた。
「寒くないの?」
「私,暑がりだから」
彼女はそう言って笑った。うそつけ、と思う。腕には無数の鳥肌が
立っていた。でも俺はわざと何も言わずにいた。女がそんなことす
る時は,必ず何か理由があるんだ。彼女は俺の思惑に気づいたのだ
ろうか、今度は逆に聞き返してきた。
「本当は寒いんだろうって,突っ込まないの?」
「本当に寒がってたら、わざわざそんな格好でいないよ」
俺がそれほどばかでないことを悟ると,少しばかり驚いたようだっ
た。
「ごめんなさい、たった一瞬前まであなたをばかにしてた」
「仕方ないよ,世の中にはそういう奴が多いんだから」
彼女に見直されてにわかに優越感を覚えた俺は,そんなキザなセリ
フをためらうことなく吐いていた。
「精神年齢いくつなの?」
彼女はぷっと吹き出してから言った。
「さあ、適当に38歳にしとく。そういう君こそどうなんだよ」
「じゃあ私は33歳」
これは月9のドラマのワンシーンではない。俺というただ普通の高
校生の身にたった今起こっている出来事である。
「本当の年は?」
「一六。高二。あなたもそれくらいなんでしょ?」
「ああ。でもひとつ年上だ」
なんだかタバコをふかしたくなってきた。でもあいにくそういう面
でうぶな俺は、くわえたことさえないのだった。
 風が吹いた。夜霧で隠されていた互いの顔が,星と月明かりには
っきりと照らし出された。顔を見合わせ,二人同時にあ――っと言
う。
「予備校で同じクラスの…」
双方そこまでは出たのだが,ついに名前は出てこなかった。そう、
今まで忘れていたが,俺が高原にいるのは予備校の夏の特訓を受け
るのが目的だったのだ。しかし、状況はどうあれ。これがきっかけ
で二人は付き合うようになったんだよということは言うまでもない。
 あれから四ヶ月、今度は冬の特訓。あの時どうして彼女があんな
格好をしていたのかは、いまだに分からぬままだ。






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