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第20回1000字小説バトル
Entry1

天に還る

作者 : かわばた
Website : http://www.kdn.ne.jp/~toribito/TJ/
文字数 : 813
  私は天界に属する天使だ。
 今は飛び級試験の一環として地上界に来ている。一年の研修を終
えて天界へ帰れば一階級飛び越えて権天使に昇格することができる。
 その栄誉を受けるため、今日、やっと天界へ帰還できる。私は窓
を開け、さわやかな風を受けた。
 時間にはまだ早いが、私は一年を過ごした家を出た。天使が住ま
うに相応しい、善良な人間の夫婦の家だ。
 私はしばらくの間、地上界を彷徨った。
 権天使として天界軍に入れば、最後の審判のその日まで地上に訪
れることもないだろう。
 地上は汚濁に満ち、神の愛を失った人々で溢れていた。私は嫌悪
を込めて人々を見た。
 審判を待つまでもなく彼らの額には数字が刻まれているように見
える。
 そろそろ時間だ。私は、目についた高い建物に登った。屋上への
扉は閉ざされていたが、わたしは軽々と乗り越えた。
 屋上の縁に立ち、眼下を見下ろす。地上界の汚濁にも関わらず、
煌めく地上の星もまた美しい。地平の彼方まで広がったネオンの一
つ一つの下に、祝福されるべき人間が、あるいは獣の数字を刻印さ
れるべき人間が住んでいる。
 私は風にあおられ、翼を広げた。
 やがて気付いた地上の人間たちが私を指差して騒ぎ始めた。人々
の目には私の白い翼がみえるのだろうか。
 まもなくだ。まもなく午前零時をもって研修の任期が終わる。
 私は腕にはめていた時計で時刻を確かめると、それをはずして投
げ捨てた。もう必要無い。
 私は床を蹴って空へと舞った。
 翼が風を打つ。
 すばらしい浮遊感が全身を包む。
 自然に浮かぶ笑みを押さえず、私は高らかに笑った。

 いつもの平凡な朝、テレビのニュースが告げる。
 「昨夜、午前零時頃、東京都世田ヶ谷区の会社員---さんの長女
で高校生のAさん16才がマンションの屋上から……」






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