第20回1000字小説バトル
Entry13
月曜日の昼下がり、街を歩いていると絶世の美女が僕に尋ねてき た。 「最近、人を泣かしたことある?」 「あるよ」 僕は泣き顔を思い出しながら素直に答えることにした。 「罪な人ね」 それだけいうと、その絶世の美女は何事もなかったように人ごみ へと消えていった。 火曜日の早朝、家で寝ているとドスの利いた男から電話が掛かっ てきた。 「最近、女と会ってるか?」 「別れたばかりだよ」 僕は、お節介な質問と思いながら素直に答えた。 「呆れた奴だな」 それだけいって、ドスの利いた声の男は電話を乱暴に切った。 水曜日の夕方、近所のクリーニング店にセーターを取りに行くと 店員の女の子が僕にいった。 「今日これから大雪なんだって」 「べつにどうでもよいよ」 僕は、白銀の雪よりも真っ白なセーターについている茶色い染み が気になったので素直に答えた。 「つまらない人なのね」 それだけいうと、店員の女の子は次の客の相手をはじめた。 木曜の午後、公園で子供たちの雪合戦を眺めていると、白くまが 僕のところへやってきた。 「宇宙人に遭ったことある?」 「ないよ」 僕は、そんなものがいてたまるかと思いながら素直に答えた。 「夢のない人だ」 それだけいって、白くまは街のほうへと向かって歩いていった。 金曜日の夜中、テレビを見ていると女子アナがブラウン管ごしに 僕に語り掛けた。 「あら?今日はひとりなの?」 「今日もそうだよ」 僕は部屋に誰もいないことを確認してから素直に答えた。 「さびしい人ね」 それだけいうと、女子アナはタンカー事故のニュースを読み始め た。 土曜日の午前中、プールで泳いでいるとメダカが近寄ってきて僕 にいった。 「最近、おかしいと思わない?」 「いや、それほど思わないよ」 僕は、いつもと変わらない退屈な日々のことを考えながら素直に 答えた。 「にぶい人だね」 それだけをいって、メダカは僕と逆方向へと泳いでいった。 日曜日の夜、メールをチェックすると知らない女の子からメール が届いていた。 「あなたは、どんな人?」 「こんな人」 僕は、この一週間の出来事をメールに書くことにした。 「変な人ね」 きっと知らない女の子はそれだけいって、僕のメールをごみ箱に 捨てるだろう。
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