インディーズバトルマガジン QBOOKS

第20回1000字小説バトル
Entry3

動物性素材

作者 : RIBOS
Website : http://www.mirai.ne.jp/~mi-osawa/
文字数 : 514
「いいか、最後まで何も考えるんじゃないぞ!」いつものようにコ
ーチが言った。
 俺は今までどおり無心でスタート台に立ち、スターターの合図と
ともに決勝のプールに飛び込んだ。

 いつもなら、このまま100メートルを泳ぎ切るのだが、オリン
ピックの決勝ともなると勝手が違う。俺が国内で敵無しと言われオ
リンピックにまで出場できたのは、身に着けている新素材のおかげ
なのだ。今日ばかりは、それを考えずにはいられない。

 マグロの皮で作られた競泳パンツは、水の抵抗を極限まで減らし、
トビウオの翼で作ったキャップは頭が水から出る際に揚力を生み出
し体を前へと引っ張ってくれる。
 50メートルのターンを当然のように1番に終えた俺は、なおも
考え続けた。
 これまで、いろんな素材を試してきた。しかし化学繊維の限界を
超えられたのは、この動物性素材だけだった。

 そうか!結局、人間がいくら知恵を絞ったところで自然には勝て
ないということか!

 今更のようにそれに気づいた時、急に目の前がモヤにつつまれ俺
はコースを逸脱していた。白魚のウロコから作ったコンタクトレン
ズが落ちてしまったのだ。

 だからコーチは何も考えるなと言ったのだ。『目からウロコが落
ちる』ことを恐れていたのだ。






インディーズバトルマガジン QBOOKS
◆QBOOKSに掲載の記事・写真・作品・画像等の無断転載を禁止します。
◆投稿された各作品・画像等の著作権は、それぞれの作者に帰属します。出版権はQBOOKSのQ書房が優先するものとします。
◆リンク類は編集上予告なくはずす場合がありますのでご了承ください。