第20回1000字小説バトル
Entry7
一年半ぐらい前だろうか。近所の魚屋の近くで珍しい猫を見かけ た。酷く痩せこけて泥だらけの汚いその珍しい猫は路地裏のゴミ捨 て場の横で昼寝をしていた。私は一番安い魚を一匹余分に買ってそ の珍しい猫に近づいていった。近くによるとその珍しい猫は耳と鼻 をピクピクと動かしてうっすら目を開けた。そのスキを見逃さなか った私はその珍しい猫めがけて石を投げつけてやった。びっくりし たその珍しい猫はギャッと叫んで逃げ出した。うふふっうまくいっ たぞ、と私は自分自身に賞賛しながら暗い夜道を帰った。しかし、 珍しい猫だったなぁ。 そして10年後… あんなに緊張したのは生まれて初めてだった。まさに新人オーデ ィション。いつか夢に見た腐れ縁である。腐っても鯛とはよく言っ たものである。ラベルが半分だけ剥がれているのはどうも気持ちが 悪い。のりでくっつけたいけどそうもいかない。世の中そんなに甘 くない。どおりで直売所の看板はいつも下手くそな字で書かれてい るはずである。だからといって人の車で平気でゲロ吐くのはどうし たものか。人権侵害である。永遠のハイテンション織田信長である。 右から二番目の青である。そんなことはどうでもいいから、早く書 類を書いてくれ。こっちも仕事なんだよ。相変わらず社長はイスで クルクル回っている。しかもパイプイスだぜ。社長秘書はいつも額 から血を流しているし、全く世の中どうなるかわからんものだなあ。 残酷なまでに時は流れる。今日のバイトは朝から晩まで立ちっぱな し、かなり疲れたね。早く風呂入って寝ようっと。女房の発想には いつも驚かされるね。あんな物から収納棚をつくっちまうんだから、 ありゃ人生七色珊瑚礁だね。 私はいつも思うのだ。もし世の中がみんなスポーツ刈りだったら と。私はいつも思うのだ。真実をいつも追い求めるあのメキシコの 覆面レスラー達はきっとよく似たところで髪の毛を引っかけて、同 じように悩んでいるのだと。私はいつも思うのだ。あの真夏の果実 達は未だに自動販売機のジュースが120円に値上がっていることを 知らないであろうと。そして私は強く願うのだ。予想と全く違った 突っ込みをされても、それはきっといつか見た夢の続きだと。
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