第21回1000字小説バトル
Entry14
子供を虐待する親が増えているという。 子供が可愛くない親なんかいない−そんな決まり文句も最近では 通用しなくなってきた。 虐待といっても、体罰やせっかんに代表される肉体的虐待と、言 葉でののしったり、さげすんだりする精神的虐待があるが、今日相 談所の職員をやっている私のところを訪れた少女は後者であった。 「お嬢ちゃんは、いくつかな?」私は訊ねた。 「9歳です」女の子は小さな声で答えた。 「お嬢ちゃんをいじめるのは、パパかな?それともママかな?」 私は、心の中で、できれば父親の方であって欲しいと願った。一 緒にいる時間の長い、母親の方から虐待をうける子の方が、圧倒的 に不憫だと思うからだ。 「ママです」 女の子は、消え入りそうな声で答えた。 「どんな風にいじめるの?ぶったりするのかなあ?」 女の子は、首を横に何度も振った。 「じゃあ、ひどいこと言ったりするんだ」 女の子は、こくっとうなづいた。そして言った。 「私、ママがわからないの。どうして、あんなこと言うのか…」 「そんな、ひどいことを言うんだ。なんて言われるのか、おじさん に教えてくれないかなあ?」 「絶対に笑わない?」女の子は上目遣いに私を見ながら言った。 「笑わないさ」 「本当に笑わない?」 「ああ、約束するよ」 「おまえのかあさん、でーべそ、って」
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