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第21回1000字小説バトル
Entry22

鳥になりたい

作者 : 羽那沖権八
Website : 小説屋やまもと
文字数 : 935
「――だから、ここで使われる過去分詞は、継続の意味ではなくて
――」
 授業の続いている予備校の教室から、柴田正也は抜け出した。
 行き交う人々の間をすり抜けるようにして、正也は夕暮れの繁華
街を歩く。
「分かんね」
 ぽつりと呟く。
「受験に成功していい大学に行って、それでどうなるのか分かんね
え。でも行かなかったとしてもその後どうやって生きりゃいいかも
分かんね」
 正也は一つ身震いしてから、ジュースの自動販売機の前で足を止
める。
「ま、差し当たり授業が一番分かんねーけど」
 バッグの中を探り、カード類で膨らんだ財布を取り出した。
 だが、財布をじっと見つめた後、彼は再び財布をバッグに戻した。
「もう稼いでる奴だっているってのに。いや、金なんかに縛られて
るから――」
 自動販売機の前から立ち去ろうとした時。
「あれ? 柴田君?」
「えっ? あっ、荒島?」
 振り向くとそこには、同級生の荒島祐二が立っていた。
「サボり?」
 祐二は笑う。柔らかく穏やかな笑顔だった。
「そういうお前だって」
「僕ぁ、自主休講。サボタージュみたいな理念も目的もないねぇ」
「そういう意味なのか、サボるの『サボ』って」
「引っかかったね。本来はサボイアって飛行艇を作った職人が――」
「思い出したようなホラは吹かんでいい」
「へいへい」
 ガタン。
「はい。少しは元気出たかい?」
「あ? え? うん、すまねえ」
 祐二が差し出した缶コーヒーを、正也はためらいがちに受け取る。
 かしっ。
「そんなに気に病む事はないと思うけどね。きょうび、どんな馬鹿
だって進学出来るんだし」
「だから鬱陶しいんだよ。進学しなけりゃその馬鹿以下だぜ。お前
ストレス感じねえのか?」
「ぜーんぜん」
 屈託なく祐二は笑って、炭酸飲料をぐっと飲み干す。
「羨ましいもんだな」
 暖かいコーヒーを舌に感じながら、正也はふと空を見上げる。住
処にでも帰るのか、烏が飛んでいた。
「鳥、か」
 知らず、正也は声に出していた。
「いいよね、鳥って」
 祐二も微笑んで空を見上げた。
「お前もそんな事思うんだな」
「えへへ、まあちょっと位はね」
「はぁ。実際、鳥みたいに自由に――」
 自由に――。
「裸で外を歩けたらねぇ」
 祐二は、とても遠い目をしていた。
「……ストレス、死ぬほど溜まってねえか? お前」






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